プロフィール

とめきち

Author:とめきち
2013年夏カカイルにはまった新米カカイラーです。
煩悩のまま駄文を書き散らしております。

ギャグとシリアスが混沌としております。
闇鍋みたいなサイトです。

本人は読むのは雑食です。
書くのはカカイルメインでちょっこっと捧げ物でライアオ書いてます。
こちらはカカイルサイトなのでそちらはUPしてません。

溺愛するポケモンはラプラスと使いやすさでコバルオン。
お稲荷さんと聞くと変態仮面が真っ先に思い浮かびます。
意外と手先が器用です。

基本的にギャグのカカシ先生はイルカ先生の話をキチンと聞いてませんし変態です。
イルカ先生は基本ツッコミです。

現パロのリゾートシリーズは基本カカイルですが色々なキャラが出てます。
っていうか最近そっちがメインな気もします・・・。

高校生シリーズは一旦完結しましたがたまに番外編で出てきてます。

リンクフリーです。
報告とかしてもらっちゃったら即効お邪魔します。
相互とかさせていただいちゃったりしたら喜んで話の一本でも書かせていただいて手土産にお邪魔いたします(笑)

ではへっぽこで珍妙で拙い文ではありますが宜しければお楽しみいただければ幸いです。

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キリ番はしばらくお休み中です

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梅雨の星

現代パラレルで教師の二人です。 初夏の夜 ⇒  飴とガム⇒今回の『梅雨の星』の順に話が続いています。
何となくシリーズ化しているようなそうでないような…。
ちなみに今日は雨の日だそうです。それにちなんで全てに『梅雨』にちなんだサブタイトルがついています
今回はちょこっと違う人も出てきました。
少し長めですが、良ければ追記よりお読みください・・・。


長かった職員会議が終わり職員たちは蜘蛛の子を散らすかのように皆散り散りにそれぞれの場所へと帰っていく。
俺も近くにいた奴らと歩き出す。
中の一人がふと窓の外を見上げて呟いた。
「帰るまでは持つかと思っていたけど、直に雨が降り出しそうだな」
その言葉に俺も窓の外を見上げる。
どんよりとした色をした空は今にも雨が降り出しそうだ。
帰りまではもつと思っていたのに…そう思いながら軽く唇を噛み締め目を閉じると彼の声が脳裏に蘇る。

『じゃあもし帰るまでに雨が降ったら…。俺が送りますから、一緒に帰りましょうね。約束ですよ、イルカさん?』

梅雨の星

1-梅雨曇
「海野先生~。おはようございます」

いつものように身分証明書を見せて学園の職員専門の門をくぐると後ろから声がかかった。
聞き覚えのある声に足を止め、くるりと後ろを振り向く。

「あ、大和先生。おはようございます」
「海野先生、歩くの早いですね。駅で見かけたんですが全然追いつけませんでしたよ」
「そうなんですか。そんな時は声かけてくださいよ?」

同じ時期にこの学園に赴任してきたこともあり、接点は少ないが大和先生とは何となく話しやすい仲である。

「今日の職員会議は面倒ですねえ~」
「そうですね、どうしても時間もかかりますしね。しかも俺達は今回後片付けの当番なんですよ」
「あれ結構大変ですよね。ん、海野先生は傘持ってませんけど折り畳み派ですか?」
「いや、朝の天気予報を見て大丈夫かな…と思って持ってこなかったんですよ」
「うわっ!!海野先生チャレンジャーですね…。この梅雨時に傘持ってこないとか?!」
「何か荷物多いの嫌なんですよね。大和先生はしっかり持って来てますね」

話しかけてくる彼の手元を見ると、しっかりとした傘が握られている。

「そりゃあそうですよ。あ、海野先生…傘が無いなら、あの…もし帰りに雨が降ったら…」
「はい?大和先生、何ですか」

大和先生が俺に何か話しかけた時に、後ろからのんびりとした声がかかった。

「んー二人ともおはよう」
「げっ!!カカシ先輩」
「ちょっとげって何よ!失礼でしょ?あと学園内で先輩はやめろって前から言っているでしょう?イルカ先生おはようございます」
「…カカシ先生、おはようございます」

笑いかけて挨拶をしてくる彼からさりげなく視線をそらし挨拶をする。

「…先輩と海野先生って、名前で呼び合うほど仲が良かったですっけ?」
「まあ最近仲良くなったんだよ。それより大和、さっきガイが探していたよ?」
「ガイ先生がですか?何の用だろう…?」
「まだその辺にいるんじゃないの。探してきなよ」
「わかりました…って先輩蹴らないで下さいよ!!」
「お前こそ先輩はやめなさいよ。ガイならあっちの方に行ったよ」

そう言い体育館の方を指さしながら、カカシさんは大和先生の腰の辺りを軽く蹴り上げている。
ブツブツ言いながら大和先生は、カカシさんの指さした方に向かって行った。
後に残されたのはカカシさんと俺。何か話せばいいのか、一緒に校舎に向かえばいいのか?いきなりの出来事に俺は頭の中が軽くパニックになっている。

「行きましょうか?」
「あ…はい…」

大和先生が去っていくのを見てから、カカシさんは俺に軽く促す。そのまま、するりと俺の横に立つ。

「傘、持ってきてないんですか?」
「は?」
「すいません、後ろにいた時二人の会話が聞こえて…。イルカ先生は今日傘持ってきていないんですか?」
「あ…はい。どうせ金曜だし、明日も予定無いから。少し位なら濡れて帰っても良いかなって思って持ってこなかったんです」
「そうなんですか…」

そのまま何となく会話が途切れる。
この前された事や、何で俺にあんなことをしてくるのか、からかっているだけなのかと色々と考えてしまい、何となくカカシさんを避けていた。
いきなりキスされて(しかも二回も)彼の事を意識するなって方が無理だと思う。
そんな事を考えながら、ちらりと彼の事を見ると彼は俺の事をじっと見ていた。

「な…な…カカシ先生どうしたんですか?なんか俺の顔についてますか?!」
「ねえ、イルカ先生。帰るまでに雨は降ると思います?」
「え?…どうでしょう。俺は傘が無いんで、雨が降って欲しくはないですが」
「そうですよね。ねえイルカ先生?」
「はい、何ですか?」

ちょいちょいと指で招かれる。何だろう?と少しだけ彼に近寄る。

『じゃあもし帰るまでに雨が降ったら…。俺が送りますから、一緒に帰りましょう。約束ですよ、イルカさん?』

不自然じゃない位に少しだけ耳元に口を寄せてそう囁かれる。
若干の違和感とともに、頭の中でその言葉の意味を反芻する。

「ねえイルカ先生、雨は…降りますかね?降って欲しいと思いますか?」

グッと息が詰まる。

「…俺には。俺には…わかりません!!」
「そうですね。俺は降ってくれた方が嬉しいな。じゃあ俺はこっちだから」

吐き捨てるように言った俺の言葉に軽く笑うと、彼は子供の様にひらひらと手を振りながら去っていった。

さっき耳元で囁かれたときの違和感の原因が、誘いの言葉を『イルカ先生』じゃなくて『イルカさん』と言われた事だとふと気づき、鳥肌が立つような、背筋が泡立つような感触とともにぶわっと顔まで熱くなる。

何かを誤魔化すかのように、ふるい落とすかのように、俺は勢いよく数回首を振るとカカシさんとは反対の方へと向かって歩いて行った。


2-梅雨空

長かった職員会議が終わり、職員たちは蜘蛛の子を散らすかのように、皆散り散りにそれぞれの場所へと帰っていく。
小等部から高等部までの全体会議な事もあり、出席人数も半端ない。
しかも今回は部活等を休みにして、教員全体が出席したため(こんな先生居たんだ)と思うような見知らぬ顔も多々見受けられた。
カカシさんと俺は席が離れている。
何となく彼の顔を見ると今朝の言葉を思い出し、動揺してしまいそうな自分がいたので、席が離れていて良かった…と内心ほっとした。

「海野先生~そっちは終わりました?」
「はい、ごみの回収もすみました。そっちはどうですか?」
「もう終わりますよー。あとはゴミ捨てだけですね」

使い終わった会議室の片づけは持ち回りの為、今月当番の俺は同僚達と一緒に会議で出されて飲み終わったペットボトルや、だだっ広い会議室の机と椅子の整理をしていた。
出されたのは飲み物だけとはいえ、半端ない教員数な事もあり、曲がった机やいすの整理を終えるのに小一時間ほどかかってしまった。

俺も近くにいた同僚達とゴミを捨てに行くため皆で両手にペットボトルが大量に入った袋を持って歩き出す。
中の一人がふと窓の外を見上げて呟いた。

「帰るまでは持つかと思っていたけど、今にもに雨が降り出しそうだな」

その言葉に俺も窓の外を見上げる。
どんよりとした梅雨独特の色をした、分厚い雲で覆われた空は今にも雨が降り出しそうだ。
帰りまではもつと思っていたのに…そう思いながら軽く唇を噛み締め目を閉じると彼の声が脳裏に蘇る。

『じゃあもし帰るまでに雨が降ったら…。俺が送りますから、一緒に帰りましょうね。約束ですよ、イルカさん?』

そんな俺の耳に同僚の声が飛び込んできて、ハッと我に返る。

「まあ全体会議は面倒だけど、いつもより早く帰れるからいいですよね。しかも金曜だから明日は休みだし」
「俺もなんですよ。これが終わったら待ち合わせしているんですよね」
「いつもより早いからなんか得した感じですよね。海野先生は、やっぱり出かけます?」
「あ…俺ですか?その…多分…まだわからないんで」

窓の外のくもり空に目をやって、曖昧に笑いながらそう答える。
深く追及されることもないまま、話は学年行事のあれこれに移り、俺は適当に相槌を打ちながら窓の外を気にしないようにしてゴミ捨て場へと向かって行った。

「やっと終わりましたね。何往復しましたかね?」
「すっかり遅くなりましたね。ゴミの量も半端じゃないから…」
「本当ですよね…。あ、そういやもう一つゴミがあったじゃないですか!!」

同僚が指差した先には別々に回収している為、あとで持って行こうとしてあったペットボトルの蓋が大量に入った袋が置いてあった。

「ジャンケンで決めますか?」

そう言いだした同僚達を片手で制してゴミ袋を掴む。

「俺は待ち合わせがはっきりと決まってないんで。今日は俺が行きますよ」
「良いんですか?海野先生」
「じゃあお願いしても…」
「その代わり…今度学食でラーメンおごってくださいよ?」
「わかりましたよ。海野先生本当にラーメン好きですね?」
「知りませんでした?俺の血液はラーメンのスープなんですよ」
「血液検査に引っかかりそうですな!じゃあすいません。お願いしますね?」
「海野先生、ありがとうございます」

口々にお礼を言ってくる同僚たちに手を振ってペットボトルの蓋が大量に入った袋を持って又ゴミ捨て場へと向かう。
職員用の昇降口で靴を履き替え外に出ると今にも泣き出しそうな色の空を見上げる。
(まだ雨は降ってないし、これだけ遅くなったから。きっとカカシ先生も、もういないだろうな…)

「雨が降ったら…か」

ポツリと呟くと同時に何かが髪を括っているせいでむき出しのうなじに落ちてきた。
慌てて空を見上げるとポツリポツリと雨粒が落ちてくる。
小走りでゴミ捨て場へと向かい所定の位置に置くと外に出てゴミ捨て場のダイヤル錠をしっかりと掛ける。
ポツリポツリと降っていた雨は今はパラパラと降り、見る見るうちに地面の色を変えていっている。
思わずチッと舌打ちし手で顔をかばいながら走り出すが、このままだと俺が帰る頃には本降りになりそうだ。
慌てて荷物を纏め、薄暗くなりところどころ廊下の電気のついている校舎の中を小走りに走っていく。
駅まではそれなりの距離がある、大事な書類も入ってないし、財布等はカバンに入っていたビニール袋で濡れないようにくるんである。
大事なものは保護したし、カバンや靴の中まで濡れるの覚悟で走っていくしかないか…。そう思いながら靴を履きかえ外に出ると横から声がした。

「ああ、終わりましたか」

『え?!』と思い振り向くと薄暗くなった中に光る銀髪が見えた・・・。


3-梅雨雷

「…カ…カカシ先生…」
「お疲れ様です。遅かったんですね?」
「あ…今月は会議室の当番だったんで」
「知ってます、さっきイルカ先生の同僚の方とお会いしましたよ。じゃあ行きましょうか?」
「何で…」
「ん?なんでって『雨が降ったら送ります』って約束したでしょ?」

事もなげにそう言うと、手にしていた傘をポンッと開く。
一歩踏み出すと俺の前まで来て、半分隙間を空ける。
どうしていいか分からず佇む俺に『ん?』と小首を傾げ手招きする。

「車まで少し距離があるから、濡れちゃいますよ?入って行ってください」
「俺は…」
「行きますよ」

カカシさんは手を伸ばして俺の手を引くと、有無を言わさず傘の中へ入れた。
人気のない敷地内はしんとしていて、傘を叩く雨粒の音がやけに大きく聞こえる。
カカシさんが差しているのは大き目の傘だけど、やはり肩が少し出てしまいじんわりと雨が染み込んでくる。
濡れてきた肩はじんわりと冷たいのに、カカシさんに触れそうで触れない反対側はじんわりと熱くなってきている。

「俺の車はこっちだよ」

ぼんやりと歩いていのと、普段駐車場を使うことが無いので、俺は見当違いの方向へ行こうとしていたらしい。
グイッと手を引かれそのままするりと肩を抱かれる。

「ちょっと肩濡れちゃってるじゃない!!もうちょっと近くに寄ってれば濡れなかっただろうに…」

ブツブツ言いながら、俺の肩を抱く手にぎゅっと力を込める。

「カカシ先生!!何しているんですか?!」
「だってイルカ先生、またどこかに行ったら困るし」
「だからって、こんな。誰かに見られてたらどうするんですか!!」
「これだけ暗いし、人もいないし、それに傘で隠れているからわからないよ」
「…でも」
「ほら、もう着いた。はい傘持ってて」

俺にグイッと傘を押し付けると、カカシさんは運転席に走っていってしまった。
カチャカチャと音がしてバタンとカカシさんが車に乗り込み、助手席の窓を内側からコンコンと叩いた。
慌てて傘を閉じ車へと乗りこむ。

「今ラジオで言っていたんだけど雷警報が出て…」

カカシさんがそう言いかけた途端、閃光とともに雷鳴が轟いた。

「今のはどこかに落ちたかもね」

呟くようにそう言うとカカシさんは車をスタートさせる。

「あの、駅まででいいんで。カカシ先生のご迷惑になりますし」
「俺は全然迷惑じゃないけど?イルカさんは嫌なの?」
「その…俺は…」
「お腹空いていない、どこかでメシでも食べてく?車だからどこか行きたいところあったら遠くても構わないけど」
「いえ…」

『お腹は空いていないから大丈夫です』そう言おうと思ったとたんグーッと大きな音が鳴り思わず真っ赤になる。
カカシさんはクツクツと笑っている。

「雷の音もすごいけどイルカさんのおなかの音も負けてないね」
「すいません、今日バタバタしていたから。こんな音が出て…自分でもびっくりです」
「謝ることじゃないよ。ねえ何が食べたい?イルカさんが決めていいよ。あ…でも俺、天麩羅は苦手なんだ。それ以外でお願いできるかな?」
「へえ、カカシ先生は天ぷら苦手なんですか?」
「うん、得意じゃないかな。あとさ、もう学校の外に出たんだし『カカシ先生』やめてほしいな?」
「カカシ…さん。じゃあ俺は麺類が良いです。できればラーメン!!」
「イルカさん急に元気出てきましたね?ラーメンですか…。イルカさんのおススメはありますか」
「そうですね…俺が良く行くのは…」

『カカシさん』と呼ぶ恥ずかしさを誤魔化すかのようにワザとはしゃいだ風に話してみる。
一人で味気なく食事するんではなく誰かと一緒に食べる方が良いに決まっている。
今日の俺は予想もしない方にどんどん流されていっている。
カカシさんが好意で送ってくれて、食事にも誘ってくれるんだったら、俺はその波に乗ってみようと思った。

鳴り響いていた雷はいつの間にか遠くに去っていったらしく、微かにしか聞こえなくなっていた。


4-梅雨寒

「カカシさん、御馳走様でした。俺が奢らせてもらおうと思ったのに…」
「じゃあさ、次はイルカさんが奢ってよ?ね、約束」

車に乗せてもらったお礼に奢ろうと思ったらカカシさんはいつの間にか会計を終わらせ、俺の分だけでもと渡そうとしたお金もやんわりと断られた。
二人でラーメン屋ののれんをくぐると、まだ雨はかなり降っている。
車はすぐそばに止めたから、二人で雨の中走って車へと向かった。

「タオルあるから使って」
「あ、ありがとうございます」
「夜になって寒くなってきたから、ちゃんとふきなね?少し暖房入れようか」

そう言いながらカカシさんは車のエンジンをかけ、俺は渡されたタオルで軽く体をふく。
ふと横を向くと、カカシさんは自分は髪も体も拭きもしないで、ぼーっと窓の外を見ている。

「カカシさん!!自分も拭いてくださいよ、タオル俺に渡して何やってるんですか?!」

そう言いながらカカシさんの髪を軽く拭く。
カカシさんは前を向いたまま俺が拭くのに任せているが、突然ポツリと呟いてきた。

「この後どうしますか?」
「この後…ですか?」

正直びっくりした。
俺はこのまま送ってもらって帰るつもりだったし、カカシさんもそのつもりだと思っていた。
何て言っていいか言葉が出ずに、ただ俺の方を見ようとせず、じっと前を見ているカカシさんの横顔を見つめている。

「この前飲み会の後に行った場所に行きませんか?雨だときっと工場地帯もまた感じが違いますよ?」

前を見たまま妙に丁寧な口調でそう言うと、やっとカカシさんは俺の方を見た。

「ね、そうしましょう?きっと雨の工場地帯も素敵ですよ」

そう言って笑うと、俺の返事を待たずに車をスタートさせる。
今ここでなら拒否できるのかもしれないけど、運転しているカカシさんの横顔には、それを言い出せない雰囲気が漂っていた。

「…カカシさん」
「なんですか?イルカさん」
「しばらくこのままドライブするんでしたら、髪をほどいても良いですか?丁度シートにあたって痛いんです」
「そんなこと…いちいち聞かなくても良いのに」
「俺、髪長いですし、万が一俺の髪が落ちていて、揉め事の原因になったら困りますから」
「…なりませんよ?」
「そんな事無いんじゃないんですか?カカシさん、もてるみたいですし」
「ここ最近イルカさんしか乗せてないですし、イルカさん以外の誰かを乗せる予定もないですから。問題ないんです」

そう言う声がふっと柔らかくなる。
何となく柔らかくなったその声を聴いて安心したのか思わずくしゃみが出た。

「寒いですか?!暖房強くしますか!!」
「大丈夫です、夜になって急に冷えてきたからだと思います。カカシさんは大丈夫ですか?」
「俺は平気です。本当に大丈夫ですか?」

妙に焦った声で言われ、俺も慌てて答える。
カカシさんはふうっと大きくため息を吐いて運転を続ける。
何となく沈黙したまま車は走り続け、いつの間にかこの前行った工場地帯の中にある駐車場が見えてきた。


5-梅雨の星

駐車場は思っていたより混んでいて、空いているスペースを見つけたカカシさんは、隣の車と一定の間隔を空けて車を止めた。
いつの間にかラジオも止めていて、しんとした車内にはワイパーの音だけが一定のリズムを刻んでいる。

「思っていたよりも、雨が強いから…。景色は良く見えないね?」
「そうですね。雨もやみそうにないですね」
「ワイパーも一回止めようか?」

そう言ってカカシさんはワイパーを止めた。
一瞬しんとしたように思えた車の中は次の瞬間、屋根にあたる雨粒の音が響き渡った。
何でカカシさんは俺とここに来たんだろう?そう思ったら思わず問いかけてしまっていた。

「カカシさんは何で俺を誘うんですか?」
「イルカさんは何でだと思う?」
「…俺が暇そうだからですか?でもそれだったら大和先生でもいいんじゃないんですか?」
「何でそこで大和の名前が出てくるの!!」

急に強い口調でそう言われ思わずびくっとする。

「…すみません。でも俺が何で誘われるか良く分からないから。カカシさんは俺にどうして欲しいんですか」
「本当に分からないの?この前キスしたのも、何でかわからないの?」
「あれは…俺をからかっていたとか。そんなんじゃないんですか?」
「からかって男同士でキスすると思う?イルカさんは、俺にキスされてどう思ったの?」
「どうって…ふざけているとか…」
「じゃあさ逆に聞くけど、イルカさんは俺の事をどう思う?あ、職場の同僚とかそういったのは無しだから」

答えようとした言葉を先回りして否定され、言葉に詰まる。
俺はカカシさんの事を…どう答えればいいんだ?!頭の中で何と答えようかと、言葉たちがぐるぐるぐるぐる踊っている。

「俺は……良くわかりません!!」
「そう来ましたか…。でもさ、『わかりません』って事はイルカさんの中で俺への気持ちを決めかねてるって事でしょ?」
「俺がカカシさんが嫌いだから、拒否しようかどうか決めかねてるとは…そうは思わないんですか?」
「…イルカさんは俺の事を拒否したいの?」

身を乗り出して小首を傾げそう問われる。
そっと手を伸ばして何をするのかと思ったらそのままそっと髪を梳ってきた。
時折そっと頬を掠めながらゆっくりゆっくり優しく梳る。

「イルカさん、俺にこういう風に触れられるのも嫌?」
「俺は……」

思わず言葉に詰まる。
ここで『嫌いです』や『同じ職員同士としての付き合い以外する気はありません』と言ってしまえば、カカシさんは今度から俺を誘う事が無くなるのかもしれない。
あれだけのマンモス校だ。たまに偶然会えば挨拶する程度の、飲み会でいれば酌する程度の元の付き合いに戻るのかもしれない。

願ってもない事じゃないか。一言『はい、あなたとは職員同士の付き合いだにしたい』と言えばいいんだ。
だが言葉が出てこない、返事を躊躇ってしまう。
そんな俺の事をカカシさんはゆっくりと手で髪を梳かしながらじっと見つめている。

今まで自分が甘やかしたことはあったけれども、こんな風に誰かに甘やかされたことなんてない。
カカシさんが気まぐれで俺をからかっているのか、何でこんな真似をするのかどうか、俺には良くわからない。

でも雨で周りは見えず、雨の音しか聞こえず、まるでこの世の中に二人だけしかいないような車の中で・・・。
どことなく甘やかな空気の中じっと見つめられると目をそらせない。
自分がこの人にとって特別なんじゃないかとだと勘違いしてしまいそうになる。
頬を柔らかく掠める手を、優しく髪を梳る手を離しがたいとさえ思ってしまう。
どんよりとした雲に覆われた太陽の見えない梅雨空のように、俺も俺自身の心の中が見えてこない。
自分で自分がどうしたいのかが分からない。

困ったように眉根を寄せて首を振る俺を見てふっと口元を綻ばせて、カカシさんは聞いてきた。

「…ねえイルカさん。キスしても良いですか?」
「はっ?!な、な、何をいきなり?!」
「いきなりじゃないですよ?イルカさんずっと俺の事警戒していたでしょ?ちょっと気も緩んだみたいだし、そろそろ良いかなって?」
「警戒って…するに決まっているでしょう?!この前だっていきなり…」
「だから今日はいきなりじゃなくて、ちゃんと聞いているじゃないですか?」

髪を撫でていた手を後頭部に当てて、酸素のたりない魚のように口をパクパクさせている俺の顔を引き寄せると、そっとキスしてきた。
この前のように長々とでは無く軽く触れ合う程度だったが顔を離すとフフッと笑いながら言ってきた

「イルカさん。顔…真っ赤ですよ?」
「そ、そりゃあ赤くもなりますよ!!」
「それで答えは?キスしてどう。俺の事は嫌?」
「……せん」
「ん?なんですか」
「だからやっぱわかりません!!自分で自分が分からないんです!!」
「わからない…?」
「わかりません。この厚い雲で覆われた梅雨の空見たく自分の気持ちが見えないんです!!」

「梅雨空みたい…か…でもね、イルカさん。ほら見てみてよ」

そう言うとカカシさんはワイパーを一回動かして、外がはっきり見えるようにした。
彼が指さしている窓の外を見ると、いつの間にやら雨が上がっていた。

「ほら、いつの間にかさ、雨も止んで、雲も無くなっているよ?取り敢えず俺と一緒にいれば、今の空模様見たく、ある時パッと自分の気持ちがはっきりするんじゃないかな?」
「……それってズルくないですか?俺が嫌だって言ったらカカシさんただの便利屋ですよ?」
「俺はそれでいいよ。イルカさんの気持ちがはっきりするまででも、一緒にいてくれれば」
「カカシさんは本当に…それでいいんですか?」
「だからそれでいいってば。それにね、イルカさんはきっと俺の事好きになるよ?」
「何ですかそれ…。呪いですか?」
「おまじないって言って欲しいなあ~。それに雲が晴れたらほら」

そう言ってカカシさんは外を指さす。
さっきは気づかなかったが、雲が消え去った夜空にはいつのまにか星が輝いていた。

「あの分厚い雲の奥にはあんなにきれいな星空が隠れてたじゃない?イルカさんのここの」

『ここの』と言う時に彼は指先で軽く俺の心臓の辺りを叩いた。

「梅雨空みたいなイルカさんのここの中にも、俺への気持ちが隠れて輝いているかもしれないでしょ?」
「…そんな臭いセリフ言って自分で恥ずかしくないんですか?」
「でもそんな臭いセリフも、似合うでしょ?」
「確かにカカシさんには似合いますけど…」

俺が言ったら笑えるかもしれないけど、確かにカカシさんが言ったらサマになっている。
渋々認めるとまた顔が近づいてきた。
(うわっ)思わずギユッと目をつぶると、おでこの辺りに何か温かいものが触れてすぐに離れていった。
びっくりして目を開けると、カカシさんが初めて見るような顔で笑っている。

「もう一回、俺を好きになるおまじない」

普段見ないようなふにゃっと崩れたカカシさんの笑顔を見て、何だか気が抜けて俺も思わず笑ってしまう。

ふと視線をあげると窓の外には、雨に濡れてしっとりと光る工業地帯の灯りと、梅雨時とは思えないような見事な星空が広がっていた。



梅雨曇………梅雨どきの曇り空をいう。重い雲で覆われたどんよりとした空である
梅雨空………梅雨どきの空模様をいう。空全体が分厚い雲に覆われて鬱陶しい
梅雨雷………梅雨の最中の雷であり、梅雨前線が日本を通過するときに鳴る雷でもある。「雷がなれば梅雨明ける」 と言われるのは後者の雷
梅雨寒………雨が降り続く梅雨のころの冷えをいう
梅雨の星……梅雨の晴れ間に見える星。雲間に少し見えることもあれば、梅雨の晴の夕空に輝くこともある。

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