プロフィール

とめきち

Author:とめきち
2013年夏カカイルにはまった新米カカイラーです。
煩悩のまま駄文を書き散らしております。

ギャグとシリアスが混沌としております。
闇鍋みたいなサイトです。

本人は読むのは雑食です。
書くのはカカイルメインでちょっこっと捧げ物でライアオ書いてます。
こちらはカカイルサイトなのでそちらはUPしてません。

溺愛するポケモンはラプラスと使いやすさでコバルオン。
お稲荷さんと聞くと変態仮面が真っ先に思い浮かびます。
意外と手先が器用です。

基本的にギャグのカカシ先生はイルカ先生の話をキチンと聞いてませんし変態です。
イルカ先生は基本ツッコミです。

現パロのリゾートシリーズは基本カカイルですが色々なキャラが出てます。
っていうか最近そっちがメインな気もします・・・。

高校生シリーズは一旦完結しましたがたまに番外編で出てきてます。

リンクフリーです。
報告とかしてもらっちゃったら即効お邪魔します。
相互とかさせていただいちゃったりしたら喜んで話の一本でも書かせていただいて手土産にお邪魔いたします(笑)

ではへっぽこで珍妙で拙い文ではありますが宜しければお楽しみいただければ幸いです。

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キリ番はしばらくお休み中です

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夢十夜 第四夜目

夢十夜 第四夜目になります。

こちらの話はカカシ視点→イルカ視点→カカシ視点・・・と言う風に交互に書いて行く予定で、今回はイルカ視点です。
曖昧で少し不思議な感じの話になっていると良いな思いつつ書かせていただきました。
今回は前回とは少し感じが違った昔話の様な、イルカと狐のどこか曖昧な話です。

良ければ追記より、ご一緒に不可思議な夢を見ていただければと思います・・・。



   夢十夜 第四夜目

   こんな夢を見た

イルカは暗い山の中、一人ひたひたと歩いている。
 本来ならばこんなに遅くなる予定では無かった。仕事で留守がちな父ちゃんと母ちゃんは今日も出稼ぎに行っている。イルカはいつも一人でうろうろしていたが、今日はいつもと違い、ちょっと届け物をしに出かけたのだった。

 一人の家でお昼ご飯を済ませたイルカが何時もの様に森に遊びに行こうとすると、里の外れにある一人暮らしの顔見知りのおばあちゃんがうろうろとしていた。どうしたのかと見上げながら問うイルカに、おばあちゃんは「隣の里に住む孫への初節句の祝いの品を渡すため人を頼んだが、いつまでたっても来ない。自分も用がありしばらく留守にするのだが、もうすぐ出なくてはいけない。このままでは日が暮れてしまう」と困った顔で言ってきた。
 隣の里へは子供の足でも往復で半日もかからない。おばあちゃんが困っていたし、イルカはお父ちゃんとお母ちゃんに『困った人の事は助けてあげなさい』と常日頃言われていたから自分が行こうと申し出た。おばあちゃんを助けれると同時に、一人で隣の里にお使いに出る自分がちょっと大人になったような気がした。
 おばあちゃんは遠慮するイルカの掌に小銭を握らせ「これで帰りに饅頭を買いなさい。隣の里では有名な饅頭屋があるから、このお金はイルカへの正当な報酬だ」と言ってきた。
 報酬と言うのは良く分からないが、このお金を自分のモノにしていいと言うのはイルカには分かった。自分のお金など普段持つことのないイルカは丁寧にお礼を言うと、その足で隣の里へと向かって行った。

 隣の里へは急いだせいもあり、日がまだ高いうちに着く事が出来た。荷物を渡すとたいそう喜ばれ、そのまま帰ろうとするイルカにお祝いのおすそわけだからと是非家の中に上がるように勧められた。ありがたいが饅頭を買って帰りたいと話すと、丁度祝いの振る舞い返しにその饅頭があるから持って行け。祝いのおすそ分けでそれで解決だと説得させられ座敷でもてなされた。
 日が傾き空が茜に染まりカラスが山に戻る頃、山を越えるともう夜だから泊まって行けと進める家人に、そろそろ出稼ぎに出ている親が帰宅する予定であるからもしすれ違いになると大変だ、山さえ抜ければ後は普段から森で遊んでいるから自分の庭の様なものだと何とか説明し、イルカはようやく解放されたが家人は眉根を寄せイルカに説明しだした。

「いいか、坊んず。言っておくが、帰り山の中で狐を見かけても知らんぷりすんだぞ」
「何でだい、狸ならいいのか?人をだますなら狸も狐も一緒じゃないのか?」

 こてんと首をかしげそう問うイルカに、家人は苦虫を噛み潰し多様な顔をしながら話してくれた。

「狸はな、だます時に背中を押していくんだ。だからどこに連れて行かれるか分からねえが、前に走って逃げれば逃げ切れる。だが狐は先に立って手を引いて行く。しっかりと手を取り前を歩いて行く。だから狐からは誰も逃げられねえんだ」
「そうなの?」

 家人は山を指差し話を続けた。

「そんだ。あと、狐には決して食べもんをやっちゃいけねえだ。この山の狐は番となる伴侶を探しているんだ。食べ物を渡し、酒を酌み交わし血を分けると婚姻の印になっちまう」
「つがい?はんりょ?って何だいそれに狐じゃなければ食べもんやっても良いのかい?」

 不思議そうな顔で聞いてくるイルカの顔をみて、家人はがははと笑った。

「すまんな。坊んずにはまだ難しい話だ。まあ、折角の土産だ。大事に持って気を付けて帰れ、まあそう言うこったな」
「うん、わかったよ。どうもありがとう」
「今日はわざわざすまんかったな。今度はうちのばあ様と一緒に来るがええ」

 家人に手を振られ手を振りかえしながら、イルカは懐に饅頭や包んで貰った振る舞い膳の残りや渡された竹の筒を入れ家路を急いだ。

     *****

 隣の里からイルカの住む里へは一本道だが、途中で山と森を抜けていく。山を越え森さえ抜けてしまえばイルカの住む里へはあっという間につく。
 落ちていく日を追いかけるように道を急ぐが、山の中腹に掛かるころにはすっかりと日は落ち、後ろにはイルカの事を追うようにぽっかりと丸い月が浮かんでいた。
 ホーホーとどこかから聞こえるフクロウの声や、時折がさりと言う音を立て走り去る小動物。
 留守がちな両親なせいもあり、イルカは暗闇は苦手では無かった。それに空では月が煌々と夜道を照らしている。イルカは時折前に向かって長く伸びる自分の影で遊びながら先を急いだ。
 ふいに横でがさりと音がする。何の気なしに眼をやると、藪の中、ピカリとなにかが光ってが見えた。
 思わず近寄ると、そこには銀色の小さな狐がこちらを向いて唸っていた。光って見えたのは銀狐の蒼い目で、片方の目は怪我をしているのか眼の上を縦に走る傷があり、そのせいかその目玉は紅い色になってしまっている。 

 イルカが近寄ると狐は牙をむきながら睨みつけるが、逃げ出さぬその銀色を怪訝に思い良く見ると、その前足の片方にはしっかりと罠が噛みついていた。

「何だお前、罠に掛かっちまったのか?血が出ているじゃないか」

 そう問いかけるイルカに向かい牙を剥いて見せる。
 狐を見たら知らんぷりしろって言われたが、こんなに小さい狐ならきっと大丈夫だ。

「可愛そうに。ちょっと大人しくしろって・・・」

 罠にかかった動物を逃がすことは、生活の糧を横取りすることに等しいが、でもこんな小さい狐なんだ。肉を取るにしても碌に取れないだろうし、毛皮にするにも小さすぎる。
 だったら、狐を逃がす代わりに、今懐に抱いている祝いのおすそ分けを置いて行ってやろう。イルカはそう考え罠に手を伸ばす。
 ガチャガチャと罠を鳴らし暴れる狐に話しかけながら、外してやろうと手を伸ばすが、狐はイルカのその手にカプリと噛みついた。

「痛ッ!」

 痛みに思わず声を上げると、狐はイルカの手を噛んだままびくりと固まった。その隙にもう片方の手で何とか罠を外そうとするが、片手ではどうも上手くいかない。
 イルカは狐にゆっくりと話しかけた。

「なあ、俺はお前を取って食おうって訳じゃないんだ。俺と一緒で小さな狐だからこの罠を仕掛けた人には悪いが、お前の事を逃がしたいと思ってるんだ」

 噛みついたままの狐の目を見ながらそう話しかけると、狐はイルカの手をゆっくりと離した。少し痛む手で何とか罠を外すと、狐は逃げもせずイルカの事を見つめていた。

「ほら、早くお逃げ」

 シッシッと追い払うような仕草をするが、狐はちょこんと座ったままその場を動こうとはしない。
 これ以上自分に出来る事は無いとイルカは罠を仕掛けた人にせめてものお詫びにと振る舞い膳の残りを罠の上に置く。そんなイルカの伸ばした手をクンクンと嗅ぐと、狐はその手をペロリと舐め上げた。

「お前何をするんだい?」

 狐はイルカの言葉など聞いていないかのように手をペロペロと舐め続ける。良く見ると、狐は先程イルカに噛みついた自分の牙の跡を舐めているらしい。くすぐったさに身を捩りそうになったイルカは狐に話しかけた。

「お前が噛みついて怪我した所の心配してくれたのか?もう痛くは無いから大丈夫よ」

 空いているもう片方の手で大人しく座っている狐の見事な銀の毛を撫でようとするが、その指先に血が付いているのを見つけた。何気なく噛まれた傷口でも触ったんだろうか?いつの間に付いたんだろうか?
 完全に固まっていない血の付いたその手で撫でてしまえば、狐の毛が汚れてしまう。そう考えたイルカは何の気なしにその指を口に含み血を舐め取ると、狐の見事な毛並みに手を伸ばした。

 そんなイルカの様子を、狐は食い入る様にじっと見つめていた・・・。

     *****

 イルカの前を狐はちょっとびっこをひきながら、それでも足音も立てずに歩いて行く。時折くるりと後ろを振り向くその様は、イルカがちゃんとついてきているか確認しているかのようだ。イルカは狐が何度目かに振り返った時に、しゃがみ込んで狐に話しかけた。

「なあ、道案内してくれているのか?でも大丈夫だ。俺の里へは一本道なんだよ。なあ、折角罠から外してやったんだ。とっととお前の親の所へ帰れよ!」

 そんなイルカの言葉を狐は小首をかしげて聞いている。

「いいか、狐。俺と一緒に来ても良い事なんてないぞ!」

 良く見ると、狐はイルカの懐をじっと見つめていた。そんな狐を見ながらイルカはハアッとため息を吐く。そのまま道の傍らに座り込む。
 ごそごそと懐に手を入れると、竹の皮にくるまれた自分の拳ほどもある饅頭を取り出し、半分に割った。

「匂いで分かったか?これは本当なら父ちゃんと母ちゃんに渡す筈だったんだからな?特別だぞ」

 イルカの前にちょこんと座る狐の前に饅頭の半分を置くと、狐ははくはくとそれを食べだした。

「なあ、お前ひょっとして、父ちゃんと母ちゃんがいないのか?だから俺について来たのか?」

 狐は食べていた饅頭から口を離すとじっとイルカの顔を見つめる。

「そうだったら俺と一緒だな。俺はな、父ちゃんと母ちゃんはいるけど、あんまり家に居ないんだ。でも俺の里では仕事が碌にないから出稼ぎに行くのは仕方が無い事だし、わがまま言っちゃいけない。でも・・・ちょっとさみしい時もあるんだ」

 狐は座り込んだイルカの手に鼻面を摺り寄せてきた。イルカは狐の首を引き寄せそっと頬を寄せ、誰にも言えなかった自分の中の孤独を吐き出す様に話し続けた。

「ああ、お前は暖かいな。お前が一緒に家に来てくれれば、俺も寂しくないのに。でももう少ししたらお別れだ。離れるのは寂しいな。一人の夜は凄く長いんだ。離したくないな」

 狐はイルカの頬をペロリと舐めると、腕の中からすり抜け、残っていた饅頭を食べ始めた。
 そんな狐の様子を見ているうちに自分の腹からも音が鳴り出す。
 二人の為に持って帰りたかったが、いつ帰って来るかははっきりとしない。持って帰って悪くするよりは・・・小さなイルカはアンコの甘い香りに勝つことが出来ず、端っこだけなら、少し位ならと自分に言い訳しながら饅頭に口を近づけ齧った。
 久しぶりに口にした甘味に頭の芯まで蕩けそうな気分になる。口の中でさらりと溶けるアンコなんて初めて食べる。もうちょっと、もうちょっとだけ・・・。気が付くとイルカの手には饅頭は欠片も残されていなかった。
 貪る様に饅頭を食べたイルカは、急に喉の渇きを覚えた。
 懐にしまってある竹筒を取りたし栓代わりの節を抜く。その中身を一口含むと同時に思わず噴き出した。

「何だよこれ。水じゃなくて酒じゃないか!」

 けほけほと咳き込むイルカの足元にゆっくりと狐は歩み寄る。そこにはイルカが吐き出した酒が小さな水たまりを作っていた。
 狐は地面に顔を寄せると、ペロペロと酒を舐めはじめた。

「おい、止めろよ。喉が渇いていたのかもしれないが、それは水じゃなくて酒だぞ?」

 苦笑しながら狐の背を撫でようと手を伸ばすイルカの目を、狐はじっと見つめてきた。

「おい、どうしたんだ」

 首をかしげながら訊ねるイルカにむかって、狐は一言口にする。

「誓いは無事済んだ。婚姻の儀は交わされた」

 狐が喋ったことに目を丸くしたイルカが思わず狐から後ずさろうとしたその瞬間、辺りは閃光に包まれ、その眩しさにイルカはくらりと意識を手放した。
 
    *****

 気が付くとイルカは誰かに手を引かれ道を歩いていた。ぼんやりとしながら足を動かし周りを見ると、何となく見覚えある枝振りから、もうすぐ森を抜ける辺りであると分かった。
 はて、自分は何でこんな所にいるんだろうか?そう考えながら無意識に足を動かしていく。イルカの手を引いて歩いているのは、見事な銀髪の少年で、背格好からするとイルカよりいくつか年上の様だった。
 ふわふわと揺れる銀髪が、まるでさっき助けた狐みたいだ・・・そう考えた瞬間、イルカはハッと我に返った!こいつは誰だ?慌てて繋がれた手を外そうと自分に向かって強く引くと、前を歩く少年はくるりと振り返った。
 少年は奇妙な狐面で顔を隠していた。
『狐は先に立って手を引いて行く。しっかりと手を取り前を歩いて行く。だから狐からは誰も逃げられねえんだ』家人の台詞が頭をよぎる、背筋がゾワリと粟立つ。
イルカは手を振りほどいて後ずさろうとしたが、狐面の少年は逆にその腕を自分に向かって引き寄せる。イルカは震える声を悟られぬように少年に向かって話しかけた。

「だ・・・誰だよお前は!なんで俺と一緒に居るんだよ」
「何でって、お前と俺は誓いを交わした。一緒に居るのは当たり前だ」
「はあ、誓いだ?お前何を言っているんだよ」
「血と食べ物を分けあい、酒を酌み交わした。お前はもう俺のモノだ」

 話が全く通じない少年に、イルカは薄ら寒いモノを感じ何とか逃げ去ろうと考えるが、手首をがっしりと掴まれていてはどうにもできない。

「・・・いいか、この手を離してくれ。俺は帰らなくちゃいけないんだ」
「帰るってどこに?」
「どこにって、この森を抜けた所にある、俺の家のある里だよ!」
「里・・・ふうん、里ってどこにあるのかな」
「ほら、森を抜けた!俺の里はあそこだよ」
「ああ、良かった。やっと森を抜けれた。影が無くなる。月が照らす。俺の縄張りの銀野原はすぐそこだ」
 
 含み笑いをしながらそう話しかける狐面の少年に腹を立てたイルカは、自分の手を引きながら先を歩く狐面を睨みつけながら、丁度抜けた森の先を指差す。

「何訳の分からない事言ってんだよ!ほら、あそこが俺の里だ。さっさと手を離してくれ」
「里ってどれ?俺には見えないけど」
「何言っているんだ、俺の里はあそこに・・・え?」

 勢いよく前を指さしていたイルカの手が、目の前に広がる光景を目にした途端、力なくゆっくりと落ちていく。

「う・・・そ・・・だろう?」

 そこには一面のススキ野原が広がっていた。
 銀板の様な丸い月に照らされ一面を銀色に変え、さやさやと吹く風にその柔らかな穂先を海の様に波打たたせている。 慌てて後ろを振り向くが、さっきまであった筈のうっそうと茂る森も、歩いて来た道もどこにも見当たらない。そこにあるのは銀色の穂先を揺らすススキの海だけだ。
イルカは少年の手を振りほどくと、柔らかに波打つススキの中をやみくもに走って行く。少年はそんなイルカの後をゆっくりと追いかける

「無い!無い!里に続く道がどこにも無い!あんた俺の里をどこにやったんだ。一体どこに行ったんだ?!」
「誓いを交わしたアンタはもう帰れないよ」
「何言ってんだ!誓いなんて俺には覚えが無い!」
「覚えていなくったって、アンタは俺と誓いの儀を交わしたじゃないか」
「さっきから誓い誓いって。誓いの儀って何だよそれ?!」
「お互いの血を舐めあい、食べ物をを分け合い酒を交わす儀だ」
「俺はお前の血なんて舐めた覚えはない」
「舐めたよ。罠から外した俺を撫でる前に、罠を外す時に指に付いた俺の血を・・・」
「罠・・・?」
 ハッとしながらイルカは改めて少年の事を見つめる。
 顔は見えないがお面の端から見える見事な銀髪は、いつの間にかいなくなったあの狐を連想させた。まさかまさかと頭を振るイルカの脳裏に、さっき自分がした何気ない仕草が、分け与えた饅頭が、自分がこぼした酒を狐が舐める光景がぐるぐると駆け巡る。

「そんな、みんなただの偶然だ・・・」

 力なくそう呟くイルカに少年は噛んで含めるように話しかける。

「偶然だとしても、血と食物、酒を使った婚姻の儀は俺とアンタの間でしっかりと結ばれた」

 そう言いながら少年は狐面をゆっくりと外す。
そこにはさっきの狐と同じ蒼い眼と紅い眼。そして紅い眼の上を縦に走る傷があった
目を丸くするイルカにの眼を見つめながら、面の下に隠されていた蒼と紅の眼を細めて少年は歌うように話し続けた。

「俺の事を離したくないってアンタが言ったんだ。里に帰っても一人なんだろう?寂しいんだろう?だったら俺と一緒にいればいいじゃないか」

 さやさやとなびくススキの海を泳ぐようにやってきた少年は、自分の背丈ほどの間を空けて、イルカの前で立ち止まった。
 イルカはそんな少年の顔をキッと睨みつけた。

「俺は一人じゃない!里に帰れば父ちゃんと母ちゃんがいる!」
「いつ帰って来るか分からない二人の事か。アンタそれでいいのか、寂しくは無いのか?里に帰ればまた始まるんだぞ。次はいつ帰って来るんたろうと柱に傷をつけ待つ日々が。楽しみにしていた約束をいつも反故にされても大丈夫だって言う日々が」
「でも・・だけど・・・」
「俺ならアンタを一人にしないよ」

 そう言いながら少年はイルカにむかって手を差し伸べる。妖艶に微笑むその顔に、イルカはその顔に思わず目を奪われる。
 イルカの前にあるのは、少年と、その後ろの大きな月と風に波打つススキ野原。
 月の銀色、ススキ野原の銀色、少年の銀髪と燃える様な紅い眼と冷ややかに光る蒼い眼。
 イルカは目がちかちかしてきて、頭の中がボーっとしてきた。
 
 この少年は本当に自分の事を一人にしないんだろうか?
 一人で膝を抱えながら過ごす夜や寒さに震え自分で自分を抱え込むような夜に、自分の傍に寄り添い温もりを与えてくれるのだろうか
 そんなイルカに少年は歌うように話しかける。

「約束しよう。誓いを交わした以上、俺とアンタはこの先ずっと一緒だ」
「お前は・・・父ちゃんや母ちゃんみたく、俺の事を置いて行かないのか?」

 思わずポツリと呟くイルカの言葉に、少年はにんまりと妖しい笑みを浮かべたあと囁いた。

「ああ、アンタが嫌だって言っても俺はアンタを離さない。アンタが一人で寝るのが寂しいなら俺はアンタと一緒に布団に入り抱きしめて歌を歌い、そして寝るまで話をしてやろう。アンタがひもじいなら俺は獲物を取って来てやろう。アンタと一緒に時を過ごしていこう。アンタずっと寂しかったんだろう?俺ならアンタに寂しい思いはさせない。アンタとずっと一緒にいてやる」
「・・・本当に・・・ずっと・・・一緒?俺の名前を呼んで、そして一緒に居てくれる」
 
 歌うように囁きかける男の声は、どこかさっき食べた饅頭の様にトロリとした甘さを含み頭の芯まで痺れてくる。その声を
聞いていると、段々この男の言う通りにすれば良いんじゃないか?と言う気になってきてしまう。

「ああ勿論さ。アンタの名前は何て言うんだ?」
「俺は・・・イルカだ。ねえ、お前の名前も俺に教えてよ」
「俺の名は・・・カカシだ。俺の名を教えるのは、その名を呼んでいいのは誓いを交わし伴侶となったイルカだけだ。さあ、イルカ。俺の名を呼ぶがいい」

 イルカは思わずゴクリと息を飲んだあと、恐る恐るその名を口にする。

「カ…カカシ」
「なんだ、イルカ」

 誰かの名を呼び、誰かに名を呼ばれる。そんな他愛もない事に餓えていたイルカは名を呼ばれ思わず目の縁を紅く染めた。

「なあカカシ。聞いても良いか」
「なんだ、イルカ」
「俺はカカシのはんりょだっていうけど、はんりょって一体なんだよ」
「なんだ、そんな事か」

 くつくつとカカシは喉の奥で笑ったと、イルカの事をじっと見つめた。

「伴侶って言うのは・・・まあそうだな。死ぬまでずっと一緒に居る相手って事だよ」
「カカシは父ちゃん達みたく、俺を置いてどこかにいったりしないんだよな。本当にずっと一緒なのか?」
「ああ、本当だ。イルカと俺はずっと一緒だ。心配しなくていい」

 その刹那、ススキ野原を吹き抜けていった一陣の風にイルカは思わずふるりと震えた。

「ああ、月を超えて夜を渡る風が吹いくる時間だ。なあイルカ、寒いだろう?ここまでおいで」

 寒さに震えるイルカの様子を見て、カカシは今度は誘うように優しく両手を広げてみせた。
 その腕が自分の為に差し出されているというだけで、イルカの心はほんのりと温かくなった。
 ああ、思えば。不在がちな両親にイルカが最後に抱きしめられたのは、一体何時の事だろうか?
 自分の為だけに差し出されたその腕に誘われる様に、イルカはふらりと一歩踏み出す。

「さあ、おいで。イルカが温もりが欲しいならば、俺は何時だってこの手でイルカを抱きしめてあげよう」
「・・・カカシ」

 誘うように両手を揺らす人の名を呟きながら手を伸ばす。
 イルカはふらりふらりと手を伸ばしたまま、一歩ずつカカシの元へと歩み寄る。
 残り僅かまで近づいたその瞬間、イルカの手首をつかみ男は自分の胸の中にイルカを引き寄せた。

「・・・つかまえた」

 囲うようにしっかりとイルカを抱きしめながら、カカシは囁く。
 カカシの肩越しには冷ややかな月とススキ野原が見えるが、自分を抱きしめるそのの体からはじんわりとした熱さが伝わってきて、イルカはうっとりと目を閉じ、その熱さに身を任せた。

 顔が近づく気配がする。イルカはうっとりと目を閉じたままカカシの成すがままにされている。
 イルカの唇に触れそうな位に近づいたカカシの唇から伝わる熱い息に背筋を震わせながら、イルカは先程カカシがかかっていた罠の様に、自分がカカシが仕掛けた見えない罠に、自ら飛び込みかかってしまった事を朧げに感じていた。
 

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