プロフィール

とめきち

Author:とめきち
2013年夏カカイルにはまった新米カカイラーです。
煩悩のまま駄文を書き散らしております。

ギャグとシリアスが混沌としております。
闇鍋みたいなサイトです。

本人は読むのは雑食です。
書くのはカカイルメインでちょっこっと捧げ物でライアオ書いてます。
こちらはカカイルサイトなのでそちらはUPしてません。

溺愛するポケモンはラプラスと使いやすさでコバルオン。
お稲荷さんと聞くと変態仮面が真っ先に思い浮かびます。
意外と手先が器用です。

基本的にギャグのカカシ先生はイルカ先生の話をキチンと聞いてませんし変態です。
イルカ先生は基本ツッコミです。

現パロのリゾートシリーズは基本カカイルですが色々なキャラが出てます。
っていうか最近そっちがメインな気もします・・・。

高校生シリーズは一旦完結しましたがたまに番外編で出てきてます。

リンクフリーです。
報告とかしてもらっちゃったら即効お邪魔します。
相互とかさせていただいちゃったりしたら喜んで話の一本でも書かせていただいて手土産にお邪魔いたします(笑)

ではへっぽこで珍妙で拙い文ではありますが宜しければお楽しみいただければ幸いです。

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キリ番はしばらくお休み中です

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夢十夜 番外編 『仮初の夢』 SCC25無配

こちらは5月3日に東京ビックサイトで開催されましたスーパーコミックシティ25で無料配布した小話になります。
文字数の関係で、端折ってい居る部分もありますので、読みにくい点あるかと思いますが、ご了承ください。
5月29日に開催されます『畑の幸 海の幸3』で配布予定の「夢十夜Ⅱ」の中に加筆修正した話が入る予定です。
「こんな夢を見た」で始まる夢十夜の、忍び設定でイルカ先生が少し不憫な殺伐とした話かと思います。
では、もし良ければ追記よりひと時の夢をお楽しみください。




夢十夜番外編  仮初の夢

     こんな夢を見た


彼らが何度となく訪れているその病院は、昼下がりの気だるげな空気の中に何処か憂鬱な空気の中も含んでいる。
受付で手続きを済ませると、担当の看護師から準備があるので少し待っているようにと言われる。座ることなく立ってじっと待っている彼の顔は、病院特有のどこか憂鬱な空気に感染したように少し陰鬱な影に染まり強張っている。
そんな彼の顔を見て心配になったのか、自分も一緒に行こうかと声を掛けてくれた連れに、彼は心配させないようにと無理やり口の端を少し上げて首を横に振って答えて見せると、連れの男は苦笑いしながら近くにある椅子に腰をおろし、彼が戻るまでの時間つぶしにと持ってきた本を持ち上げて見せた。
タイミングよく看護師が廊下の奥から白い何かを持って現れる。
その姿を見てそちらに向かおうとした彼だったが、くるりと向きを変え連れの元に向かうと小さな声で「カカシさん。貴方がいるから、大丈夫です」と囁いた。
ふわりと目元を緩めたカカシの顔に釣られ笑顔になった彼は、今日こそきっと上手くいく、そう思いながら少し先で佇んでいる看護師の元へと急いだ。

シンとした廊下には彼と引率の看護師の二人の姿しか見当たらない。
特に特徴もないリノリウムの床に足音が響いては吸い込まれるように消えていく。
白いのっぺりとした壁に何お飾りもないドア。
チチチと小さな音を立てる蛍光灯。
時折曲がる角の先にも同じ光景が広がっている。

初めてであれば迷いそうな場所であるが、彼はもう何度もここに訪れているから慣れている。
したがって案内は不要だと思い声を掛けているのだが、看護師に『規則ですから』とにべもなく断られている。
他のドアとは少しだけ様子が違うドアの前で二人は足を止める。
部屋番号以外に何も書かれてないその部屋は、通常の病室とは違い、外から鍵がかかる様になっているだけでは無くドアに小さなのぞき窓もついており、この中にいる人物が色々な意味で特別待遇である事を示していた。

「では、こちらをどうぞ。先に準備は済ませてありますが、入ってからの事は十分すぎる程お分かりですよね。終わりましたら帰り際には何時ものように受付に声を掛けてください」

うなづいてみせると、看護師はくるりと向きを変え歩き出す。
彼はその足音が聞こえなくなると、ようやく渡された白衣を広げ袖を通す。何度か深呼吸を繰り返すと、ゆっくりとドアノブを回した。
部屋に入ってすぐ目に入るのは鉄格子の付いた窓だ。少し視線を横に流すと何の変哲もない長机とそれを挟むようにしてパイプいすが置かれている。
その片側には、閉じた袋状の袖の外側に短い革ベルトの先端部分が縫いつけられた拘束衣を着た男が腰かけている。こうやって彼が来ると看護師がこの部屋まで来ては机を用意し、男を座らせ準備する。パイプ椅子に腰かける男は、肩下まで髪を伸ばしたどこか胡乱な眼をした無表情な人物だった。

「こんにちは」
「…こんにちは。初めまして」

とある問いかけをした時以外は能面のように表情を変えない男の前に置かれた椅子に腰かけると、彼は何時ものように男に向かって問いかける。

「初めましてじゃないんですよ。昨日も来たんですが、忘れちゃいましたか?」
「はあ、そうなんですか」

今日も彼の言葉に何の関心も示さない男の言葉にどこかガッカリしながらも、話を続ける

「そうなんですよ。貴方さえ良ければ、今日も何時ものようにお話しましょう。あ、ご気分は大丈夫ですか?途中で何かあればすぐにお話を止めますのでおっしゃって下さいね」
「…はい。別に平気です」
「貴方のお名前と職業を教えていただけますか?」
「…うみのイルカです。アカデミー教師です」
「うみのさんですね。へえ、アカデミー教師なんですね」

台本に書かれたセリフを読むかのように何度も繰り返した会話を今日も又繰り返す。
まるで出来の悪い舞台の様だと思った彼は、心の中で少しだけ笑った。
それと同時に、今日こそはこの先の悪夢のような会話が少しでも変われば良いと心から祈った。

「ではうみのさん。貴方は自分が何でここに居るか分かりますか?」
「俺が・・・俺がここに居る訳は…」

 男は体を前後左右にゆらゆらと揺らし始めた。
座っていた椅子ごと倒れるんじゃないかと思うくらいのけ反ると、男はその動きを止め低い声で笑い出した。

「今日は何日ですか?」
「今日ですか。うみのさん、何かご予定でもあるんでしょうか?」
「ええ、大事な彼との結婚式の日が近いんです」

どろりとした目を細め、男はクスクスと笑いだす。

「俺の結婚相手が誰だか知ってます?次期火影候補って言われているはたけカカシなんですよ。彼から付き合ってくれって言われた時、びっくりしましたよ。最初は階級の差もあって断りましたが、カカシさんってば何回断っても告白してきて。最終的には熱意に負けたというか、絆されたというか…。どうせ彼が結婚するまでの暇つぶしだろうと思っていたら、今度はプロポーズされてね。その頃には俺達は里でも公認の中でしたが、勿論結婚するとなれば話は違います。反対も凄かったです。でもカカシさんは「イルカ以外と結婚する気は無い」って言って一人一人説得していって。嬉しかったなあ…。なのに変なんですよ。カカシさんが俺以外の人と結婚するって話を聞いて、まさか嘘だろうと思いましたね。嘘だとしても、話を聞いただけで嫉妬で腸が煮えくり返るかと思いました。だから俺は式が行われるって日にこっそり会いに行ったんです。カカシさん、白いタキシード着て吃驚した顔で俺の事を見てました。その隣に立つのは俺の筈だったのにって思ったら、目の前が怒りで真っ赤に染まったみたくなってね。気が付いたら隠し持っていたクナイ片手に襲いかかってましたよ。でもね、相手が邪魔してきて俺のクナイはカカシさんに掠りもしなかったんです。真っ白なタキシードが血でどんどん染まって行って…。呆然としている俺に眼もくれず、カカシさんは相手の名を呼んでました。ねえ、なんでこうなっちゃったのかな?アンタならわかる?おかしいよね」

一気に話し終えた男は今度は小さく笑いだした。小さかった笑い声が段々と大きくなり、聞いている方がおかしくなるんじゃないかと思う様な高笑いにかわる。それがピタリと止まった時、男は最初の時の様に表情を一切そぎ落とした能面のような顔に戻っていた。

「…うみのさん?」

彼が呼びかけるが男は微動だにせず、ぼんやりと空中を見つめたままだ。こうなってはもうどんな事をしても反応しないのは、今までの経験で分かっている。

「また明日きますね」

小さくそう告げると、彼は俯きながらゆっくりと部屋から出て行った。

     *****

部屋から出た彼が顔を上げると、別の場所で待っていた筈のカカシがそこに立っていた。

「来なくていいと言ったのに」
「アンタは態度で示しただけで、来なくていいとは言ってないですよ」
「カカシさん、子供の屁理屈じゃないんですよ。俺が言いたい事は分かっているでしょ?」
「じゃあ、俺が言いたい事も分かるでしょ?」

カカシの言葉に彼は思わず視線を逸らす。

「何回だって言うけど、俺はアンタが心配なの」
「それは判ってますし、そう思ってくれてありがたいと思ってます」
「じゃあ、自分の事も考えて。友達だと思っていた男に裏切られて複雑な心境なのは分かりますが、このままだと今度はアンタが壊れてしまう」
「でもアイツがこうなったのは俺が原因なんです。アイツもカカシさんが好きだったなんて知らなくて…俺は…」
「それは何度も聞いた。それにあの男がこうなったのはアンタが原因じゃないって何度も言ってるでしょ」
「でも…」
「しかしアンタも本当にお人よしだよね。幾ら元同僚で親友のように思っていたとは言っても、結婚式の邪魔をされた奴の所にわざわざ毎日通う?」

カカシは横目でドアをチラリと眺めると、ため息を吐いた。

「俺を庇って代わりに式の当日に刺されて、やっとよくなってきたと思ったら加害者のお見舞い兼カウンセリングって形で毎日のようにこんな辛気臭い場所に通って」
「…これが自己満足なのは分かっています」
「自己満足でも良いんだよ。アンタの傷がそれで癒えるんなら。でもさ、来るたびに、更に傷つくのを見るのは嫌なんだ。やっとの思いで手に入れた、自分の大事な伴侶を心配するのは駄目な事?」

パッと彼がカカシに視線を戻す。
眼の下には隠しようも無い位濃い隈が浮かんでいて、彼の苦悩を物語っている。
カカシは手を伸ばすと目の下の隈をそっと撫でる。何度か繰り返した後、今度は彼の左手を持ち上げる。
カカシが薬指に煌く銀色のシンプルな指輪に恭しく口付けしてみると、彼はわたわたと慌てだした。

「カカシさん。何するんですか、こんな所で!」
「これ位は良いでしょ。それにこんな辺鄙な場所、誰も来ませし、いませんよ。この…特別室の中の彼以外はね」
「でも…アイツはカカシさんと結婚した俺の事を憎み怨みながらここに居るんです」
「それはあっちが勝手にやった事でしょ?」
「ええ、そうです。分かってます。それなのに俺はそんな状況であってもカカシさんと結婚できたことが嬉しいんです。酷い奴ですよね」
「酷い奴だろうがなんだろうが…俺が愛しているのはアンタだけだよ」

そう言って、カカシはもう一度薬指に口付けを落とす。

「それはアンタも良く分かってるでしょう?ねえ『イルカ』」

…白衣を着たままの『うみのイルカ』はその言葉に潤んだ目でじっとカカシの顔を見つめていたが、「ええ、俺もカカシさんを愛しています」と深く頷いて見せた。

     *****

はたけカカシとうみのイルカは恋仲である。と言うのが、いつの間にか木の葉の里の常識になっていった。
とは言ってもはたけカカシは次期火影と評される人物である。何時かはうみのイルカと別れ、それなりの身分の御令嬢なり何なりと結婚するであろうと里の上層部は思っていた。そのつもりで見合い話をカカシの元へと持ち込んでいたので、カカシがイルカ以外を伴侶とする気が無いと宣言した時は猛反対した。
だがそんな上層部をあざ笑うかのように、カカシは一人また一人と懐柔していき、幾人かはいなくなりいつの間にか二人の結婚に反対する者はいなくなっていった。
 
そして紆余曲折で迎えた結婚式当日。
どうせ後で見世物のようにさせられるんだから、その前に内輪こじんまりとあげるで事となった式は極々内密に行われる事となっていた。
その当日、控室にいた二人に祝いの言葉を述べに来たイルカの同僚が急にクナイを取出し「俺の方がふさわしい」「他の奴に渡すくらいなら」等叫びながらカカシに襲いかかってきた。
とっさに身を挺して庇ったイルカが重傷を負い、同僚はイルカを刺した後自分の首を切ろうとしたが、カカシに阻止され駆け付けた人たちによって捕縛された。
突然の出来事に式は中止になったが、内輪だけの式であった事と現火影である綱手が参列予定だったことが不幸中の幸いであった。
その場ですぐに箝口令が引かれ、イルカは急に入った任務先で同僚と事故に合った事として処理され、同僚は禁術に掛けられた事としてこの病院に入院させられた。
自分の怪我よりも同僚が何であんな奇行に走ったかを心配していたイルカだったが、同僚が目覚めた後、自分の事を『うみのイルカ』だと思い込んでいると聞いて顔色を失った。
俺の顔を見ればきっとアイツも正気に戻る筈です、と自分の怪我も治っていないのに病院に行くと言い張ったイルカに綱手は、まずは自分の怪我を直せ、と言い聞かせた。
ある程度回復してから病院に向かったイルカだったが、同僚はイルカの顔を見ても特に何の反応も示さなかった。
ただ、イルカ相手であれば会話をすることが分かった。
少しでも元に戻ればと、カウンセリングの様なモノを兼ねてイルカは病院に毎日通っているが、特定の言葉以外反応せず、少しでも変化があればと毎日同じ事を繰り返すイルカの負担も計り知れなかった。

「あいつのカカシさんへの気持ちに気付かなかった、俺がいけなかったんですかね?」

イルカの眦からほろりと涙が零れる。

「俺…カカシさんとの話、アイツに聞いて貰っていたんです。告白されて困った事とか、付き合ってからの惚気とか…。アイツ俺の事恨んでいたんですかね?」

カカシはそんなイルカを手を伸ばして抱き寄せるとゆっくりと話しかける。

「イルカは良くやっているよ。でもね、少し頑張りすぎだ」
「アイツは…アイツは本当に…良い奴だったんだ。大事な…大事な友達だと思っていたんだ。でも俺のせいで…俺が…壊れてしまって…でも前みたく…戻って欲しくて…」

時折しゃくりあげながら話すイルカの背を抱きしめながら幼子にする様に優しく擦っていたカカシは、イルカが少し落ち着いてきた様子をみせるとその手をそっと緩める。
カカシから少し体を離すと、イルカは大きな音を立て鼻を啜った。泣いた事で少し落ち着いたのか、カカシに向かってようやく笑顔を見せた。 
そんな笑顔に少しだけ口元を緩めたカカシは廊下の先を指差した。

「あ、そうだ言い忘れてたんだけど、さっき綱手様が来たよ。彼の今後についての話があるそうだから、応接室で待っているって。良い医療忍術が見つかったらしいよ」
「え、綱手様がいらしてるんですか?そう言う話なら早く言って下さい!」

カカシの言葉にぎょっとした様子を見せたイルカは慌てて何度か目元を拭ってみせる。歩き出そうとするが、カカシがその場に佇んだままなのを見て不思議そうに首をかしげた。

「カカシさんは一緒に行かないんですか?」
「ああ、俺は少し後で来てくれって言われてるし、今から受付に戻るのも面倒だし、少ししたらゆっくり歩いて行くよ」
「そう言う事なら…。じゃあ、俺は先に行きますね」

慌てて応接室へ向かうイルカの姿が長い廊下の先に消えた事を確認すると、カカシは目の前にあるドアノブに手を伸ばし、ゆっくりと回す。 
部屋の中には男がイルカが出て行った時と同じ状態でダラリと腰かけていたが、その眼にカカシの姿を映したその瞬間刃物のように煌く殺意が走ったが、すぐに能面のような顔に戻った。

「ねえ、アンタさ。いつまでイルカの振りしてんの?アンタが狂って無い事位、俺には分かってるんだけど。アンタが好きなのは俺じゃなくてイルカでしょ?バレバレなんだよねさっきだって俺の事見た瞬間殺気発してるしさ。演技するならイルカの前だけじゃなくて、憎い相手の前でも徹底的に演じなよね」

何の反応も示さない相手の前に立ち、カカシは淡々と話しかける。

「結婚式で俺を刺そうとしたのだって、そうすればイルカが庇うってわかっていたからでしょ?イルカを殺して自分も後を追って無理心中しようとした?それで失敗したから今度はイルカの振りをして、イルカの関心を少しでも引き付けようとしてるの?惨めだねえ」

カカシの挑発するような笑い声にどんよりとした男の目が反応を示す。

「何ならアンタが正気に返るまで、イルカののろけ話でもしようか?初めての時の様子とか、時折自分から誘ってくる仕草とかさ。時折見られる乱れっぷりとか…」
「煩い!黙れ!俺のイルカを汚すな!」
「ああ、やっと化けの皮がはがれたね。それにアンタのイルカじゃなくて、イルカは髪の毛一本に至るまで俺のモンだから」

ハッと鼻で笑うカカシに噛みつかんばかりの勢いで男が怒鳴りつける。

「…うるさいうるさいうるさい!黙れ!お前が!お前が後から入ってきたんだ!俺とイルカの間に割り込むように入り込んできた癖に!俺が誘う度に、声を掛ける度にさり気なく邪魔をしていたのは誰だ!」
「俺ですけど何か?何もしないでもだもだしていたくせに良く言うよ」
「お前が邪魔をしなければ、イルカは俺のモノになる筈だったんだ!お前さえいなければ!」

興奮して椅子から立ち上がろうとした男だったが、拘束衣のせいでバランスが取れずそのまま床に倒れ込む。鈍い音を立て芋虫のように転がりながらもカカシを睨みつける男の側へと歩みを進めると、カカシは害虫を見る様な目で男の事を見おろした。

「その汚い口でイルカの名前を呼ばないで貰える?あれは俺のモノだから。アンタだろうが他の奴だろうがどんな奴だろうが俺の相手じゃないから。いいお友達のままでいれば、俺もまだ見逃してやったのにね」

カカシの言葉に逆上したのか、のた打ち回り暴れ回る男の事を馬鹿にした目で見つめるその眼差しはイルカが見た事もない様な冷ややかなものだった。

「イルカの心に居座るために狂った振りまでしてご苦労様。俺じゃない他の奴に心砕いていたのは許せなかったけど、逆に害虫を退治する事が出来て良かったのかもね」
「害虫だと?」
「害虫以外言いようがないでしょ。でもアンタのそんな努力も明日までしか持たないからさ。残念だね」

何のことかと眉根を寄せる男にカカシは笑ってみせる。

「イルカの憔悴っぷりが見てられなくて、綱手様に頼んで明日アンタに関する記憶だけ消して貰う事になったんだ。自分が起こした馬鹿な行動のせいで、明日にはアンタはイルカの中から存在自体を消されるんだ。それこそ一欠けらも残さずにね。綱手様も渋っていたけどようやく首を縦に振ってくれたんだよね。式に関しては急な任務で延期になった事にするし、もう一度式の準備ができる事だけに関しては、アンタにお礼を言っておこうかね。もっとも今頃そのイルカは綱手様にアンタの治療法だって誤魔化された話を聞いているだろうけどね」
「そこまでするのか…やっぱり最悪な男だな」
「人の結婚式を台無しにしてくれた挙句、最悪な手段でイルカの中に残ろうとしたアンタに言われたくはないね。まあ、ある意味同族嫌悪ってやつかもしれないけどさ」
「お前が…お前が…いなければ・・・」

足元で暴れる男に「いい加減、煩い」と一つ蹴りを入れる。しゃがみ込むと痛みで唸っている男の顎を片手で掴んだ。腰のあたりに回していたもう片手の中で一瞬キラリと何かが光り、くぐもった音がしたがすぐに静かになった。

ドアを閉めようとしたカカシは、後ろから聞こえてきた微かな音に少しだけ眉を寄せ肩越しに後ろにチラリと視線を落とした。

「ああ。…最後の挨拶位キチンとしなくちゃ、イルカに怒られちゃうね。それじゃあ、名も知らない誰かさん、さようなら。…永遠にね」

自分で自分の言葉に満足したらしいカカシは口の端を上げ微笑むと、バタンと音を立て後ろ手にドアを閉める。しんとした廊下を歩きながら今後の事について、都合のいい話だけを聞かされているであろうイルカの元へと向かった。
 部屋の中からはもう何の音も聞こえなかった…。

     *****

向かった先の応接室にいたのはどこか疲れた顔をした綱手だけだった。

「残念ながら入れ違いだね。イルカは今さっき出て行ったよ」
「そうですか」
「イルカだが、この前見た時よりもやつれていたな。渋々飲んだお前の話だったが、イルカの為を思えば良かったのかもしれないな。ああ、明日の話だが、お前に言われた通りぼかし誤魔化して話してあるからな」
「ありがとうございます」
「お前の為じゃない、イルカの為だ」
「ええ、俺の大事なイルカの為ですね」

カカシのその言葉に綱手はわざとらしく大きくため息を一つ吐くと、カカシから視線を逸らした。

「カカシ…分かっていると思うが、幾らイルカが大事だとは言え、やり過ぎは禁物だぞ。幾らお前が次期火影候補だとは言っても、色々と限度があるからな」
「分かってますよ。じやあ、明日宜しくお願いしますね」

ひらひらと手を振って去っていくカカシの後ろ姿を、綱手は苦虫を噛み潰したような顔で見送っていた


カカシが外に出ると、イルカは大きな木の木陰で空を見上げていた。
時折何か追い払うような仕草をするイルカの姿に首を傾げながらカカシが近付くと、イルカが走り寄ってきた。

「イルカ、さっきから何してるの?」
「暖かくなってきたからか虫がいて。さっきから追い払っているんですけど、しつこいんですよね」
「ああ、虫か。分かった、動かないでね」

その言葉と同時にイルカの耳にシュッと鋭い音と「これで大丈夫」と言う満足げな声が聞こえた。フフッと笑いながらクナイをしまい、そっと手を伸ばすとイルカの頬に触れる。

「もう大丈夫。どんなモノからでもイルカは俺が守るから」

何時もと少しだけ様子の違うカカシにどこか戸惑い気味のイルカだったが優しい声と頬に当てられた手の温かさにそっと目を閉じる。
そんなイルカの態度に少し頬を緩ませ顔を近づけようとしたカカシだったが、その視線がふと下に落ち何かを捉える。二人の足元には、さっきイルカにまとわりつき、カカシがクナイで真っ二つにした哀れな虫の亡骸が転がっていた。
フッと小さく鼻で笑うとカカシはイルカの耳元で優しく囁く。

「大丈夫。イルカには虫の一匹たりとも近づけないから。永遠にね」

耳元で囁かれた優しい声の中に潜む一欠けらの少し狂気にに気付いたのか、思わず身震いしながらも顔を赤らめるイルカ。それでも眼を瞑ったままのイルカの顔を見つめるカカシは蕩けそうな笑顔を浮かべながらイルカの両耳を塞ぎながら顔を傾ける。
二人が柔らかく唇を重ると同時に足元に転がっている虫の亡骸をカカシが思いきり踏みつぶしたが、カカシの作った二人だけの世界に浸っていたイルカはそれには気付く事は無かった。

                              【終】

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