プロフィール

とめきち

Author:とめきち
2013年夏カカイルにはまった新米カカイラーです。
煩悩のまま駄文を書き散らしております。

ギャグとシリアスが混沌としております。
闇鍋みたいなサイトです。

本人は読むのは雑食です。
書くのはカカイルメインでちょっこっと捧げ物でライアオ書いてます。
こちらはカカイルサイトなのでそちらはUPしてません。

溺愛するポケモンはラプラスと使いやすさでコバルオン。
お稲荷さんと聞くと変態仮面が真っ先に思い浮かびます。
意外と手先が器用です。

基本的にギャグのカカシ先生はイルカ先生の話をキチンと聞いてませんし変態です。
イルカ先生は基本ツッコミです。

現パロのリゾートシリーズは基本カカイルですが色々なキャラが出てます。
っていうか最近そっちがメインな気もします・・・。

高校生シリーズは一旦完結しましたがたまに番外編で出てきてます。

リンクフリーです。
報告とかしてもらっちゃったら即効お邪魔します。
相互とかさせていただいちゃったりしたら喜んで話の一本でも書かせていただいて手土産にお邪魔いたします(笑)

ではへっぽこで珍妙で拙い文ではありますが宜しければお楽しみいただければ幸いです。

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夢十夜番外編【こうふくや】

10月の大阪インテの無配です。
お手に取ってくださいました皆様ありがとうございます。
夢十夜番外編となってますが、これ一つで読めるようになっています。
宜しければ追記よりご覧ください。
それでは皆様、いい夢を……。


閉まったシャッターに張られた「本日臨時休業致します」の文字。

 その意味が上手く理解できず、俺は目を皿のように開けて三度確認した。

 書かれた言葉のその意味をようやく理解した俺は、がっくりと肩を落とした後大きくため息を一つ吐いた。



   夢十夜番外編【こうふくや】



 思えば今日は朝から些細なトラブル続きだった。


 手始めにと言っちゃなんだが、まずはしっかり掛けた筈の目覚ましが鳴らなかった。

 不精してきちんと閉めてなかったカーテンから差し込む眩しい朝日に眼を瞬かせながら時計を見れば、針は家を出る時間の十五分前を差していた。青ざめながら慌てて飛び起きると、パジャマ代わりのスウェットを脱ぎ捨て洗面所に向かう。

 髪を結び顔を洗っている最中、縛っていたゴムが劣化していたのかブチリと言う嫌な音を立てて切てしまい、水に濡れた顔に髪がぺっとりと張り付いた。指に絡み付くような纏わりつくような感触は良いとは言えないが、整髪料変わりだと思いながら結び直そうとすると、今度は代わりのゴムが見つからない。横目でちらちらと時計を気にしながら何とか探し出したゴムで結び直せば、いつもと違うからか結びにくくて、何度もやり直していたら、朝飯を食っている余裕なんてない。

 仕方ない、ご飯は炊けているから握り飯を多めに作って、暇な時間を見計らって食べるか……と思いベストに袖を通しながら台所に向かう。
カパリと蓋を開けると、柔らかな湯気と共に白く光ったご飯が現れる……筈だったのだが、蓋を開けた炊飯器の中身は水に浸った生米のままだった。
……目の前の光景が信じられず十秒は見つめていた。そっと蓋を閉め、もう一度開けてみた。が、やっぱりそこにあったのは水に浸った生米のままであった。
 頭の中が?マークで一杯だったが、ハッと我に返り時計を見るとすでに家を出る予定の時間になっている。
慌てて蓋を閉めると玄関へと向かった…のだが、その途中で足の小指を角にぶつけた。痛む足を引き摺りつつ、通勤に使っている鞄を掴み階段を下りている最中、残り数段って時に足を滑らせ尻餅をついてしまう。
 痛む尻を擦りながら、今日は厄日かと八つ当たりで蹴っ飛ばした石ころは実はしっかりと地面に埋まっていたらしく、俺は更に追加された思わぬ痛みに涙目になりながらアカデミーへと向かったのだった。


 その後も一つ一つは子細な事なんだけど、ちょっといらっとするような事が続いた。

例えば眠気覚ましにと、通勤途中に自販機で買ったコーヒーが思ったより冷えていなかったり。
例えばトイレの個室に入ったら、トイレットペーパーが切れているのに替えられていなかったり。
例えばお昼の食堂で食べたかった定食が俺の前で売切れていて、代わりにおまけして貰った味噌汁の浅蜊の身に砂が入っていたり等々…。

 一つ一つはほんの些細な事だ。でもコップの中に一滴一滴でも水を溜めて行けばいつしかあふれるように、俺の中にもダメージが溜まっていた。

 午後、資料を取りに席を外して戻ってきたら、職員の人がいれてくれたらしいお茶の俺の分が無かった。
いなかった自分が悪いんだが、ちょっとムッとしていると隣の同僚の分も無かった。(おっ、お前も忘れられていたのか?)と思いながら席に着くと、丁度お茶の当番だったらしい女の子が戻ってきた俺に気付いたらしい。少し経った頃「ここに置いておきますね」と机の空いたスペースに湯呑みを置いてくれた。
 そのまま同僚にも同じようにカップを置いてぺこりとお辞儀をして去っていく後ろ姿を見ながら、言変わらず初々しくて可愛い子だな……なんて思っていると、隣の同僚の席から香ばしい匂いが漂ってきた。
 ふと横を見ると、同僚の席には何故かお茶じゃなくてコーヒーが入っている。しかも添えられたスプーンの上にちょこんとお菓子まで載っている。何でこいつはコーヒーなんだ?

「コーヒーを頼めるなら、俺も頼めばよかったな」

 俺のセリフと訝しげな視線に気づいたとたん、同僚は何故かでれっとにやけた顔になりながら囁いてきた。

「いや、俺だけ特別なんだ」
「特別って何だ? あの子の残業の手伝いでもしたのか?」

 首をかしげる俺に更に表情を崩した奴は顔を近づけると「実はさ、あの子と付き合う事になったんだよね」と締まりのない顔で言ってきた。

「はあ?!」

 思わず大きな声を出してしまい、同僚が慌てて俺の口を塞ぐ。

「大きな声出すなって。付き合い始めたばかりなんだよね。実は切っ掛けはな……」

 驚いてしまい、嬉々としてしゃべっている同僚の声も碌に耳に入ってこない。え、こいつとあの子がか? 
 別に恋愛感情としてあの子が好きな訳じゃなかったけど、何となくいいなと思っていたからちょっとだけショックな気がする。
 いや、結構ショックかも。確かにこいつは良い奴だが……そんなことがぐるぐると頭の中を回っている。
 そんな事を考えているうちに、いつの間にか仕事が終わっていた。隣の奴は「じゃあ俺、彼女と帰るから」と爽やかに去って行った。
 そんな奴とは対照的にどんよりとした気分の俺は、嫌な事を振り払うようにブンブンと思いきり頭を振る。
少しだけすっきりした頭の中にポンと浮かんだのは「そうだ! 一楽に行こう!」という事だった。

 うんそうだ。一楽に行こう。奮発して餃子に生ビールもつけて、嫌な事なんて忘れてしまおう!

 下がり気味だった気持ちを無理やり持ち上げながら、向かった先で俺が見たのは「本日臨時休業致します」の張り紙だった……。
 一楽の前に張ってある臨時休業の文字を見た途端、今までの疲れが一気に溢れだした気がした。

気にしないようにしていたけど、今日は一日本当にツイてなかった。

 一つ一つは普段なら大した事は無いのに、それが積み重なって一気に背中へと伸し掛かってきた気分だ。いっその事座り込んでしまいたいが、座り込んだらもう立てる気がしない。
 ……なんだか物凄く疲れてしまった。
 ラーメンの気分なのは今更変えられない。だったらせめて、一楽じゃないラーメン屋で食べて帰ろう。確かこの近くに新しいラーメンの屋台が出来たって誰が噂していたのを耳にした気がする。
 大きく一つ溜息を吐くと、俺はすぐ脇にある昏い路地の中に足を踏みいれた。 

 すぐにつくと思ったラーメン屋には、なかなかたどりつくことが出来なかった。意地になった俺は、話半分に聞いていた噂話の記憶を辿りつつ、確かこの角を曲がって裏道に入って…と歩いているうちに、自分がどこを歩いているのか一瞬わからなくなってしまった。
 同じ様な場所をぐるぐると回っている気がする。そんな事を思いだした頃、いきなり目の前に空き地が現れた。
 そこには何故か野営で使う様な、大きめの天幕が空き地にぽつんと立っている。
 これがラーメン屋か? と思いながらうろうろしてしまう。
 天幕の入り口は半分ほど開いているが、そこからは辺りにラーメン屋特有の鼻をくすぐるような匂いも無ければ柔らかな湯気も流れてこない。
 どこをどう見てもラーメン屋には見えない。
 ここが何屋なのかは知らないが、天幕の脇にちょっと歪な字で『こうふくや』と書かれた小さな看板らしきものが風にはためいている。

 ……怪しい。
 どう見ても怪しい。

  普段の俺だったら近寄りもしないだろうけど、朝からツイてなくてやけになっていた俺は、その中に吸い込まれる様に中に入り込んでしまった。
 半端に開いていた天幕の入り口を持ち上げてくぐると、中はボンヤリとした灯りに包まれていた。
 辺りを見回すと、ガランとしたその中には長机と椅子がポツンと置かれていて、長机の両端にろうそくが置かれているのが見えた。誰かが座っているのが見えた。

「いらっしゃいませ」

 そう話しかけてきた人物は声で男だと分かったが、まるで昔話の魔法使いのようなフードの付いたマントを羽織っている為、顔かたちは判らない。

「どうぞ座ってください」

 机を挟んで反対側の席を指示され、取り敢えず座ってみる。

「えっと、ここはラーメン屋じゃないですよね」
「違います」
「そうですよね」

 はははと笑って、誤魔化す様に後頭部を掻く。そんな俺に静かな声が降ってきた。

「ここは、こうふくやです」
「……こうふくやですか?」

 怪しさのあまり、眉根を寄せて問い返してしまう。見た目も怪しいが、やっぱり怪しい。このまま立ち去ろうと思ったとたん、目の前の男がフードを脱いだ。

「え?」

 そこには、ナルト達の上忍師に当たるカカシさんの姿があった。

「え、カカシさ……」
「手を」

 思わず立ち上がって名前を呼ぼうとするが、話を遮られる。

「手を貸して貰えますか?」

 有無を言わさぬその声に、俺は聞く事も出来ず片手を差し出す。すると「もう片手も」と言われ、両手を上向きに差し出した。
 カカシさん(仮)は俺の手の上に自分の手を重ねてきた。軽く重ねたまま少しだけ目を瞑っていたが、パチリと目を開けると少しだけ眉根を寄せて「ああ、今日はツイていない一日だったんですね」と呟いた。
 驚いて思わず目を見張る俺の顔を見ながら、彼は目を細めて笑って見せた。

「そんなあなたにはこれをどうぞ」

 彼がパチンと指を鳴らすと、上に向けたままだった俺の掌にパラパラと空中から何かが降り注いできた。思わず目を丸くしてよく見ると、それらは小さな粒チョコや金平糖、色とりどりの砂糖菓子だった。

「え、どこから?」
「それは内緒です。貴方が元気になれる薬です。さ、どうぞ」

 勧められるまま思わず口に入れると、ふわりと優しい甘さが広がる。
 その甘さに吸い寄せられるように、次々に口に入れてしまい、気が付くと手のひらは空っぽになっていた。

「疲れた時には甘いモノ。美味しい物を口にしたら幸せな気持ちになるでしょ? 口福ってヤツですね」

 フフッと笑いながらそう言うと、今度は俺の頬に手を添えた。

「ああ、始まる前に終わってしまったんですね」

 少しだけ悲しそうな顔で呟くと「次はこれを」と、又パチンと指を鳴らした。

 慌てて受け止めた掌に乗っていたのは、親指の先程大きさで銀色のふっくらとしたハート形をしていた。

「綺麗ですね」

 指先で挟んでしげしげと見つめる。淡い蝋燭の光にキラキラと輝くそのハートは口にするのが勿体ない位に綺麗だった。

「これは何なんですか?」

 首を傾げながらそう尋ねると「貴方を幸福にしてくれる薬です」と微笑まれた。

「これは始まらなかったあなたの次の恋の為に。今度は良い恋に巡り合いますように。そんな薬ですよ」

 キラキラ綺麗なそれは食べるのが勿体ない気がする。

「食べないんですか?」

 カカシさん(仮)が俺の事を見つめながら聞いてきた。

「何だかもったいなくて」

 そう呟く俺の顔を覗きこみながら、カカシさん(仮)は首をかしげる。

「でも、食べなくちゃはじまりませんよ?」
「でも、やっぱり勿体ないです」

 そんな俺の指先から、彼はするりとハート形をした銀色を掠め取る。

「何をするんですか?」

 じっと見ていた物をいきなりとられて焦る俺に、彼は悪戯っぽく笑って見せる。

「良いですか? これが現れたって事は始まる前に終わった恋じゃなくて、別の恋がアナタの中にあるって事なんですよ? 食べない方が勿体ないじゃないですか」

 そう言いながら、彼は前歯でソレを挟んだ。

「それは俺のです!」

 思わず立ち上がった俺の首筋に手を添えると、そのまま引き寄せる。
 唇がかすかに重なると同時に、中に何かが押し込まれる。口に入った瞬間、それはトロリと溶けて、脳髄まで痺れる様な甘さが口中に広がっていき、酔ったような心持になる。
 ゆらりとろうそくの明かりが揺れる。

「おやすみなさい、いい夢を。明日が貴方にとって、口福で、幸福でありますように」

 微笑みながらそう告げられた途端、ろうそくの明かりがフッと掻き消え、辺りは暗闇に包まれた。


      *****


 ハッと気づくと、朝だった。ここはどこだと顔を上げて辺りを見回すと、自分の布団の上だった。
 むくりと起き上がると布団の上に胡坐をかいて座り込む。

「何か変な夢を見た……」

 崩れた髪型を更に乱す様にガシガシと頭を掻きながら見下ろすと、かろうじてベストは脱いでいるけど、アンダーやズボンは着ている。辺りを見回すと枕元にはカバンが投げ出されたままだ。

「一体、どこからどこまで夢だったんだ?」

 夢とは言え、カカシさん(仮)とキスしてしまった……。

「あんな夢を見るって事は……。おれ、実はあの子よりもカカシさんの方が好きだとか? いや、そんな事は無いだろう」

 呟きながら立ち上がる。何気なく時計を見ると、目覚ましが鳴るよりも三十分ほど早い時間だった。何時もよりも早い時間にもかかわらず、頭の中はすっきりしているし、体も軽い。
 取り敢えず洗面所に向かって見回すと、無いと思っていた髪ゴムは、自分でしまう位置を変えただけだったし、壊れてしまったと思っていた炊飯器は良く見たらタイマーの時間の設定がリセットされていただけだった。
夢のせいか分からないが、今日は朝からツイているかもしれない。でも、あれは本当に夢だったんだろうか?そんな事を考えながら、今日は嘘のようにはかどる朝の支度をこなしていった。

 今日は一日受付勤務だ。アカデミーに資料だけ置いて受付に向かった俺は、挨拶をしながら手早く準備をすませる。
今日の分の依頼書に目を通していたら、カカシさんの事をふと思い出した。ちょうど隣にいるのはアカデミーでも隣の同僚だ。準備中に申し訳ないと思いつつ、馴染の気安さで声をかける。

「なあ、カカシさんって今日は指名任務入っているかな?」

 俺の手元にある今日の依頼書には、カカシさんが出ている言う情報は無い。指名任務が無ければ恐らく待機所にいるだろう。そうだとしたら、後で話をしに行って見よう。

「はたけ上忍か? 俺が今日渡された中には、はたけ上忍指名の依頼は入っていなかったと思うが……」

 ぺらぺらと手元の書類を捲る俺達に、少し離れた所にいた奴が声を掛けてきた。

「はたけ上忍なら一昨日から里外の任務に出てるぞ。俺が頼んだから間違いないぞ。多分早ければ……二~三日中にでも戻るんじゃないのか」

 ……実は心のどこかで、昨日の出来事は夢じゃなくて、実は本当にあった事じゃ無いかなんて思っていたのだ。でも、あれはやっぱり夢だったのか。

「何だ、イルカ。はたけ上忍に何か用だったのか?」
「いや、大丈夫。たいしたことはないんだ」
「まあ仕方ない。お前ら仲良いもんな」

 同僚の言葉に思わずきょとんとしてしまう。

「そうか。普通だろ?」
「いや、そんな事ないって。はたけ上忍、お前と一緒の時だと話しかけやすいって評判なんだぜ」
「そうなのか?」
「はたけ上忍だけじゃなくて、お前もそうだよ。はたけ上忍と一緒のときのイルカはどことなく雰囲気が柔らかいぞ。俺、出来ているかと思った事があったくらいだし」
「あ、それは俺も思った。本当はどうなんだ?」
「そんな事ある訳無いだろ。朝から変な事言うなよ。ほら、準備しないと朝の受付ラッシュが始まるぞ」

 茶化すような同僚の言葉に柔らかく否定しながらも、俺は夢の中でカカシさん(仮)言われた『別の恋』と言う言葉が頭の中に何故だか浮かんでしまい、思わず唇を抑えてしまう。

「なあ、イルカ。……お前ひょっとしたら熱でもあるのか? 顔赤いぞ?」

 訝しげな同僚の言葉に肩が跳ねる。

「いや、何でもない! ちょっと暑くてさ」

 ブンブンと頭を振りながらわざとらしくパタパタと仰ぎながら書類を手にする。書類を分けながら、今日カカシさんが里にいなくてよかったと心の中で思わず安堵してしまった。

 そんなこんなで何とか仕事をこなして帰りに一楽の前を通ると、今日はシャッターが開いていて、暖簾越しにテウチさんと目が合った。「イルカ先生、今思わず「昨日お休みだったんですね。」と声を掛けると申し訳なさそうに頷かれた

「ええ、すいません。イルカ先生昨日来てくれたんですかね」
「そうなんですよ。テウチさん具合でも悪かったんですか?」
「そう言う訳じゃないんですが。わざわざ足を運んでもらったのに申し訳ありません」
「いえいえ、テウチさんの具合が悪いとかじゃなくて良かったです。でも昨日は一楽の気分だったんでちょっと残念でした」

 俺の言葉に申し訳無さそうに肩を竦めたテウチさんだったが、何か思いついたかのようにパッと

「イルカ先生、もしお時間大丈夫なら、ちょっと寄って行きませんか」

 そう声を掛けられ暖簾をくぐって中へと入ると、いつもとは違う香ばしい香りが漂っている。

「何だか何時もと違う匂いがしますね」

 スンスンと鼻を鳴らして匂いを嗅ぐ俺にむかって、テウチさんは手を動かしながらにやりと笑ってみせた。

「実はね、前々から常連さんからのリクエストもあって、期間限定のラーメンを作ろうと思っていたんです」

 どこか楽しげな様子で麺をほぐしながらお湯の中に落す。

「昨日はそれに載せる具材を探して、ちょっと遠くまで足を伸ばしていたんです。イルカ先生に無駄足踏ませちゃった代わりに、良いのが見つかったんですよ」
「試作品で申し訳ないですが、無駄足を踏ませたお詫びに是非食べて行って下さい」

 ささ、立ってないで座った座った。と言うテウチさんの声に促されて、腰かける。湯切りをしたり具材を乗せたりしている後姿を眺めていると、ふわりと柔らかい湯気と食欲をそそるような香りとともに、俺の前に丼が差し出された。
 スープまで残さず食べ終わると、テウチさんと今食べたラーメンについて色々と話し合う。一通り話し終わり立ち上がり頭を下げる。

「新作美味しかったです。きっと人気出ますよ」
「イルカ先生のお墨付きなら間違いなしですね」
「一足お先に頂いちゃって、何か申し訳ないですね」
「いえいえ、こちらこそ無駄足踏ませちゃって。どうぞ、これからもご贔屓に」

 最後にもう一度軽く頭を下げると、テウチさんとアヤメちゃんの声に送られながら暖簾をくぐり外に出た。
 くちくなったお腹を軽く撫でながら、昨日とはまるで反対のような今日を思い返すと、夢の中のカカシさん(仮)に言われた「これからどんどん良くなりますよ」の言葉を思い出す。
 ふと視線を泳がして捜したのは、一楽の少し先にある路地だった。

 確か昨日はここから入って行ったんじゃないだろうか? 

 街燈が無いせいで路地の奥は暗く先が見えない。そこに向かって一歩足を踏み出そうとしたが足を止め、くるりと向きを変え路地を背に歩き出す。
あの夢だかどうか良く分からない不思議な出来事は、そのままにしておいた方が良い気がする。
 フフッと笑いながら、俺は振り向く事なく歩いて行った。


     *****


 不思議な夢を見てから幾日か過ぎたが、あの日の運の無さが嘘のように毎日をとんとん拍子に過ごしている。
同僚達にも「何か最近調子が良いけど、何かあったのか?」と聞かれたけど、曖昧に笑ってごまかしている。
 今日も定時とは言わないけど、割とすんなりと仕事を終わらせることが出来た。
(確かに調子が良いけど、夢の中で食べたお菓子のお蔭かなあ)なんて思いながらアカデミーを出て歩いていると「イルカ先生」と後ろから声を掛けられた。
 聞き覚えのある声に振り向くと、少し後ろで俺に向かって手を振っているカカシさんがいた。立ち止まって待っていると、カカシさんは少し足を速めて俺の所までやってきた。

「イルカ先生、今お帰りですか?」
「カカシさんも戻られたんですね。任務お疲れ様です」
「あ、俺が里に居ないの御存じだったんですか? はい、さっき戻りました。あの、良かったら一緒に帰りませんか?」
「はい、喜んで。取り敢えず、ご無事な様で何よりです」

 カカシさんは後頭部をガシガシと掻きながら俺の言葉に頷いて見せると、そのまま並んで二人で歩き出す。
 暫く他愛もない話をしていたが、フッと会話が途切れる。

「実はね。俺、この前不思議な夢を見たんです」
 
 口をついて出た言葉に思わず自分で吃驚して目を丸くする。特に言うつもりなんてなかったのに、カカシさんを前にした俺は、自然とその事を口にしていた。

「へえ、どんな夢ですか?」

 興味を引かれたのか、途切れた会話の糸口になれば良いと思ったのかは分からないが、カカシさんは興味深そうに話の先を促してきた。

「それがね、カカシさんも出て来るんですよ」
「俺ですか? 一体どんな夢だったんですか。変な事してなければいいんですけどね」

 おどけたように肩を竦めて見せるカカシさんに、思わず口元が緩む。

「折角なんでイルカ先生さえ良ければ、どんな内容だったのか俺にも教えてください」

 どこか真剣に俺を見つめる目に、思わず生唾を飲み込む。

「ええ。それじゃ、少し長くなるかもしれないんですけど、聞いて貰えますか?」
「それは構いません……って、じゃあ座って話しましょうか?」

 カカシさんは少し先にあるベンチを指差す。俺が頷くと二人で並んで腰掛けた。
 カカシさんの横顔を見ながら、最後に『アナタの恋の為に』と言いながら口移しされた事を思い出してしまう。

 さて、何て話し始めよう?

 どこからが夢の話でどこ現実だったのか俺にもはっきりとしてない。不思議な部分だけ話せばいいのか、着いていなかった朝から話せばいいのか?
 悩みながら何気なく横を見ると、カカシさんは何かを待っている子供のような楽しげな眼で俺の事をじっと見ている。今まで見た事が無い顔で俺の事を見ているカカシさんを見て思わずどきりとする。思わず唾を飲み込むと、口の中には何も入っていない筈なのに、夢の中でカカシさん(仮)「次の恋の為に」と言って口移しで渡された銀色の菓子の甘さが口の中に蘇る気がした。
 一瞬だけ触れた唇の柔らかさを思い出したとたん、急に早くなる鼓動には、今はまだ気付かない振りをしてそっと眼を瞑る。

 あの不思議な夢の話を途中で終わらせるか、最後まで話すかどうかはどうなるか分からないけど、どちらにしたってきっと悪いようにはならない気がする。
 そう決めると、大きく息を吐きながらゆっくり目を開ける。
 少しだけ彼に身を寄せ近付くと、囁く様にそっと最初の言葉を口にした。

「こんな夢を見た……」


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