プロフィール

とめきち

Author:とめきち
2013年夏カカイルにはまった新米カカイラーです。
煩悩のまま駄文を書き散らしております。

ギャグとシリアスが混沌としております。
闇鍋みたいなサイトです。

本人は読むのは雑食です。
書くのはカカイルメインでちょっこっと捧げ物でライアオ書いてます。
こちらはカカイルサイトなのでそちらはUPしてません。

溺愛するポケモンはラプラスと使いやすさでコバルオン。
お稲荷さんと聞くと変態仮面が真っ先に思い浮かびます。
意外と手先が器用です。

基本的にギャグのカカシ先生はイルカ先生の話をキチンと聞いてませんし変態です。
イルカ先生は基本ツッコミです。

現パロのリゾートシリーズは基本カカイルですが色々なキャラが出てます。
っていうか最近そっちがメインな気もします・・・。

高校生シリーズは一旦完結しましたがたまに番外編で出てきてます。

リンクフリーです。
報告とかしてもらっちゃったら即効お邪魔します。
相互とかさせていただいちゃったりしたら喜んで話の一本でも書かせていただいて手土産にお邪魔いたします(笑)

ではへっぽこで珍妙で拙い文ではありますが宜しければお楽しみいただければ幸いです。

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~縛~

一昨年の9月に出した完売本です。

カカシ先生の荷物を預かったイルカ先生。うっかり落としてしまい、破損していないか確認してもらったところ、中から出てきたのは目を疑うような品々で……。
それをきっかけにカカシ先生の緊縛趣味を知ってしまったイルカ先生と、イルカ先生を縛ってみたいと告げるカカシさんの話になります。

本番シーンはありませんが、自慰のシーンがあるためR18にしています。
自分の中では『表裏一体』と対をなす本で、『表裏一体』はMに目覚めていくカカシさんで、『縛』はSと言うか緊縛趣味のカカシさんになります。
「続きは書かないんですか?」と有り難いお声もいただいた話です。
個人的に表紙の柄、使用した紙と遊び紙が凄い気にいってます。
うっかりして自分用の本も販売してしまって、唯一手元に紙媒体が残っていない話でもあります。

サイト閉鎖についてコメント等ありがとうございます。
閉鎖ではなく、話をそのまま残さないのですかとの言葉もいくつかいただき、少し考えています。
落ち着いたら返信させていただけらと思います。

~縛~良ければ追記よりお読みください……






 鍋の中にある水が鍋肌に細かい泡を纏わりつかせている。その泡が少しずつ大きくなっていくと同時にくつりくつりと音を立てだんだんお湯へと変わっていくその様を、男は何の感情も浮かべない眼でただじっと見つめていた。
 その鍋の中に沈められているモノは水がお湯に変わるにつれ、ゆらゆらとまるで陽炎のように揺らめきながら、じわりじわりと内部にこびりついた何かを排出しはじめる。清く澄んでいた水が段々と濁って行くのを眺めながら、男は自分の心の中につもった黒い想いも一緒に吐き出しているように感じて口の端を少しだけ上げた。
 何度も繰り返した手順であるけれど、この工程は自分の中にある人に言えないようなどす黒い何かを一緒に出してしまっている様な気がしてならない。
 一見綺麗に見えるそのモノから染み出した汚れが鍋の底に溜まって行く様子を見ると、どこかささくれた様な心が落ち着いて行くのを感じる。
 こぽこぽとあぶくを立てながら、鍋の中の水が徐々に底も見え無い位に濁った色に変わっていく様を、その男は少しだけ目を細めじっと見つめていた。

    *****

 ザワザワと賑わう受付で、今日も次々と受付の仕事をこなしていく
手際よく素早く、一つのミスも見逃さない様に、素早く次々と書類をチェックしていく。
 そうやって一日のうちで一番混雑する時間を乗り越えてると、時折隣にいる同僚と一言二言言葉を交わす余裕も出来てきた。後回しにしていた片づけなくちゃいけないけれどもちょっと面倒な書類に手を付けるか、と下を向いたまま強張った肩をぐるぐるとまわしていると、卓上にスッと一枚の報告書が差し出された。
 その紙の先にある見覚えのある手甲のついた手袋に視線を上げると、そこには幾分くたびれた様子のカカシさんが立っていた。
「イルカ先生、お疲れ様です。報告書をお願いします」
「はい、お預かりします。ご無事で何よりです」
「ありがとうございます。でも俺よりイルカ先生の方が無事じゃなかったんじゃないんですか」
「え、何でですか?そんなにすぐにわかりますか?」
「判りますよ。だってここに皺が寄っちゃってますよ?」
ここ、と言いながらカカシさんは自分の眉間をトントンと叩いて見せた。思わず自分の額を両手で押さえながら指先でそっとなぞると、気づいていなかったが気合を入れ過ぎて仕事をしていたのか、眉間にくっきりと皺が寄ってしまっている。
「気合い入れて凛々しい顔のもいつもと違って良いですけど、俺はいつもの癒し系みたいな笑顔の先生の方が良いかなあ」
「そうですか?どこにでもあるような顔ですよ」
「里に戻って来たって感じがして」
 肩を軽くすくめ、どこかふざけたように目を細め笑うカカシさんの顔を見ると、どこか力が抜けておでこに置いた手を外した後、思わずにっかりと笑ってみせる。
「癒し系ってそんな可愛いもんじゃないですよ。凛々しいってカカシさんみたいな男前に言われるとお世辞でも嬉しいですねえ。あ、遅くなりましたかカカシさんお帰りなさい。任務が少し長引いたようですが、ご無事そうで何よりです」
 ちょっと苦笑いしているカカシさんから報告書を受け取ると、必要な個所を手早くチェックしていく。カカシさんはそんな俺の様子をじっと見つめているのがその気配で分かった。
「ちょっと今回は天候が味方に付いてくれなくて、手間取ってしまいましたよ」
「今回は天候不良とはいえ・・・割と日数がかかったんですね」
 報告書に書かれた行程表を見ると、当初の帰還予定よりも一週間近く伸びているのが分かる。
「そうですね。だけどその分少し余裕もあって、向こうで色々な店なんかも見れて良かったです。でも任務にかかる日数が伸びた分、冷蔵庫の中のモノも傷んでしまってますね」
 カカシさんはそう言いながら少し恥ずかしそうな顔をして、照れ隠しなのか手を頭に置いてガシガシと掻き始めた。
「え、カカシさんってば、任務に出る前に冷蔵庫の中を空っぽにしていかなかったんですか?」
「それがこんなにかかるとは思わなかったんで、すっかり油断していて。最近は予定通りに任務が終わる事が多かったんで、すっかり平和ボケしちゃっているみたいです。冷蔵庫の中の食品は諦めるものとして、帰りに何か買って帰りますよ」
「あ、俺もうすぐ上がりなんです。ちょっといい店見つけたんで、良かったらこの後どうですか?」
 手でお猪口を持つ仕草をしながら何気なく誘うと、カカシさんは少しだけ眉根を寄せて考え込んでいた。うーんとうなった後でふるふると数回首を横に振ると、少し険しい眼をしたまま言葉を口にした。
「イルカ先生からのお誘いは凄く嬉しいんですが、今日は止めておきます。ちょっと書庫にもよらなきゃいけないし。また今度誘って貰えますか?」
「こちらこそ任務明けに声掛けちゃってすいません。じゃあ又声掛けますから、今度はカカシさんが都合のいい日に行きましょう」
 そう言いながらにかっと笑ってみせると、俺の様子を見たカカシさんは安堵した顔で頷いて見せた。
「ええ、約束ですよ。どんなお店か楽しみにしていますね」
「わかってます。俺も聞いた話で何ですが、落ち着いた雰囲気で個室もあるらしいんで、カカシさんと行ってみたいと思ったんですよね。
因みに俺の次の休みは一応三日後です」
「へえ、随分と良さそうな店ですし、早いうちに行ってみたいですね。一度家に帰ってみて、予定が分かったらすぐに連絡します」
「そんなに慌てなくても、店は逃げませんよ」
 誘いを断ったのはカカシさんの方なのに、まるで子供が出かける親に何とか自分の元にいて貰おうと縋る様に、俺に向かって必死になって話しかけてくるからちょっと可笑しくなってきて口元が緩んでしまう。誤魔化すかのように視線を下に落し、預かった書類を確認していくと、ちょっとしたミスを発見した。
「あ、ここ記入漏れですね。すみませんがここに記入をお願いします」
 一か所書き忘れたらしい箇所を見つけ、ペンと一緒にカカシさんに報告書を差し出す。カカシさんは俺からペンを受け取ると、少し考え込んだ後、屈みこんでスラスラと必要事項を記入していく。
 少し伏し目がちな目元を飾るまつ毛も銀色だ、しかし綺麗な顔をしているよなあ・・・・・・なんて思いながら、ふと何でカカシさんは彼女を作らないのかと疑問に思った。
 カカシさんは少なくとも俺の知る限りでは、誰かと付き合ったりとか遊郭みたいなところに行ったりとかの話を聞いたりしたことは無い。まあ、俺との付き合いなんてほんのごく一部の事だろうから、俺が知らないだけなのかもしれない。でも受付と言う仕事柄、それなりに噂話も耳に入りやすい立場にいるが、カカシさんに関してはどこのくの一に付きまとわれたとか、警備に付いた先の大名の姫に見初められたとかそう言った話を聞く事はあるが、性的な話や色事に関する話が舞い込んでくる事もない。
 俺は結構一緒に居る事が多いからか、受付のくノ一達から「はたけ上忍との飲み会のセッティングをして!それが無理なら好みのタイプを聞いてきて」と詰め寄られることも多く、それがあまりにもしつこかったため、一度飲んでいる最中の勢いで聞いた事がある。
「うーん、まあ今は良いかなって思うんですよね。縁があれば出来ると思いますし」
「じゃあ、好みのタイプはどんな感じなのか教えてくださいよ」
「そうですね、しいて言うならば『水の月』ですよ。それよりも、次は何に飲みます?これ美味いんですよ」
と誤魔化されてしまった。後で調べてみたら「水の月」とは『掴めそうで掴めないものという例え』らしい。

水の月・・・・・・掴めないもの・・・・・・と聞いて子供の頃の出来事をふと思い出すが、すぐに首を振って頭の中から追い出してしまう。思い出す必要はない。子供の頃のくだらない思い出だ。

「すみません、イルカ先生。確認お願いします。もうすぐ仕事が終わりで嬉しいのは判りますけど、仕事なんですから最後まできちんとやらないと」
 小さな声でそう言われ、我に返る。いつの間にかボンヤリと考え込んでしまっていたらしい。
「実は厄介な書類が残っているんです。それを終わらせなきゃな帰れないなって考えていて。ボーっとしていてすいませんでした」
 書類があるのは嘘じゃない。頭を下げ抜けていた部分の確認をする。
「お疲れ様でした。カカシさんには明日から四日間の休暇になります」
「先生も嫌な事は早く終わらせないとね。じゃあ、予定確認しますから、タイミングが合えば行きましょうね。約束ですよ?」
 カカシさんは俺の手から受領書を受け取りダメ押しの様にそう言うと、軽く手を振りながら去って行った。
 いつの間にか受付のピークは過ぎていて、数人が他の受付で手続きをしている位だから、書類さえ終われば時間通りに上がれるな、なんて考えていると、隣の同僚が声を潜めて話しかけてきた。
「お前さ、よくはたけ上忍の事を俺達と飲みに行くような感じで気軽に誘えるよな」
「そうか、俺も最初に声掛けられたときは緊張したけどさ、行ってみたら案外お前達と飲みに行くのとそう変わらなかったぞ。その後も気軽に声かけてくれるし、イルカ先生も暇な時によければ誘ってくださいって言われたし、一緒に飲んでいて楽しいから遠慮なく誘わせて貰ってるんだよな」
「遠慮なくって。まあ、確かにはたけ上忍は、理不尽な事で怒鳴ってきたりいちゃもん付ける上忍連中とは違うけど、俺達と一緒にするなよ」
「そんな事ないって。一回一緒に飲んでみろよ、気さくだし任務で行った先の国の話も聞けて面白いぞ。ああそうだ、どうせなら今度飲む時にお前も一緒に来るか?」
 何気なくそう聞いてみると、同僚は慌てたようにブンブンと勢いよく横に首を振って見せた。
「いやいやいや、無理だって」
「なんでだよ。さっきも言ったけど変に上忍ぶっている所も無いし、話も面白いし、一緒に飲んでいて楽しいぜ」
「それはさ、あくまでイルカが相手だからじゃないか」
「そうか?そんな事ないと思うけど」
「俺さ、お前がいない時に何度かはたけ上忍の受付を担当したことがあるけど、必要最低限の会話しかないし可もなく不可もなくって対応されたぞ。他の奴が担当したときだってそうだったし」
 同僚は苦虫を噛み潰したかのようか顔で話を続けた。
「それにはたけ上忍ってさ、一部の人達を覗いて滅多に他の人と飲みに行くことが無いぜ。上忍待機所でくの一に纏わりつかれているのは良く見るけど誘いは全部断っているらしいし。俺が知っている限りだが、はたけ上忍と良く一緒にいる所を良く見るのはイルカ位だ」
「そう言えば確かにそうかも。でもな、俺も断られる事が結構あるぞ」
「そうか?あ、でも確かに、前も長期任務の帰りに断られていたよな」
「え、そうだっけ?」
「そうだよ、はたけ上忍が「長期任務の後で疲れてるんで又誘ってください」って言いながら断っているのを、珍しいな思いながら仕事していたのを覚えているからな」
 同僚の言葉につられ記憶を掘り起こすと、確かに俺が書類を受け取るついでに誘って断られるのは長期任務の後ばかりな気がする。
「そうだな。確かに長期任務の後だ」
 丁度その時、コンコンと軽いノックの音がした。カチャリとノブを回す音がして、受付のドアの影からシズネさんがひょこりと顔を出すと、そのままきょろきょろと辺りを見回す。
「失礼します。ごめんなさい、ちょっと聞きたいんだけど、カカシ君はもう報告書は出し終わったのかしら?」
「あ、シズネさん、何かあったんですか?カカシさんなら、少し前に報告書提出されましたよ」
「あらそうなの。今さっき綱手様の所に報告に来たんだけど、ひょっとしたら受付の後に来たのかしらね」
「はたけ上忍なら行かれてから少し経ってますから、ひょっとしたらそうかもしれませんよ」
俺達の言葉に頬に手を当て少し首をかしげて困った顔をしているシズネさん。さっきの苦虫を噛み潰したような顔とは打って変わった笑顔を浮かべながら、同僚が少し上ずった声でシズネさんに話しかける。
「はたけ上忍に何か御用だったんですか?」
「う~んとね、実はカカシ君が不在の時に配達された荷物をこちらで預かっていたの」
 シズネさんは困った顔のまま、小脇に抱えていた荷物に軽く視線を落としてみせる。
「明日からカカシ君休暇でしょ?折角だったら早目に渡しておきたかったんだけど、どうしようかしら」
「この後書庫にも寄るって言っていましたが、ひょっとしたら執務室に行かれる前に行っているかもしれませんね」
「書庫にはさっきまで私がいたのよ。戻ったら綱手様に丁度カカシ君が今まで居たって聞いて、慌ててここに来たのよね。そうしたらまだ書庫にいるかしら?急げば追い付くかな」
困ったように肩を軽くすくめてみせるシズネさんに、隣の同僚は少し赤い顔で勢いよく話しかける。
「あ、それだったらイルカに頼めばいいんじゃないですか!もう終業時間だし、はたけ上忍もきっとまだその辺にいるだろうし、イルカが追いかければ追いつくと思いますよ」
 顔を赤らめながら話す同僚の横顔を見ながら、そう言えばこいつと前に飲んだ時にに「シズネさんって何かいいよね~。でもな、綱手様付きだから、俺達とはあまり接点がないし、なかなか話しかける機会が無いんだよな~」っては愚痴られた事があった気がする。
「でもイルカ君の仕事もまだ残ってるんじゃないのかしら?」
「大丈夫です。今見ての通り受付も空いてますし、残りの仕事は俺が引き受けます!なあ、イルカ。それで良いだろう?」
 普段あまり接触が無いシズネさんに、ここぞとばかりに良い所を見せたいのか、同僚は少しドヤ顔で名案とばかりに一人で頷いている。
 シズネさんは困った顔で、俺の顔と手にした荷物に視線を往復させている。仕方ないなと立ち上がると、シズネさんに向かって仕事とは全く関係のない話を話し始めていた同僚の肩を軽く叩いた。
「ほんっとうに俺の残りの仕事任せていいんだな?」
「え、ああ。うん、男に二言は無い。任せておけ」
「そりゃあ良かった。ちょっと面倒臭い書類が残ってたんだよな。お前って本当に頼りになる奴だな」
 同僚の言葉に思わずにんまりと笑ってみせる。そんな俺の顔を見て奴はひくりと唇を戦慄かせたが、心配そうに見ているシズネさんの顔を見ると、俺に向かってわざとらしくため息を吐いて見せた。
「まあ、俺が言いだしたことだから仕方がないか。それよりシズネさんに俺の良い所アピールしておいてくれよ。あ、お疲れ様です。書類お預かりしますね」
 俺に向かってこっそりと話しかけていると、任務帰りの上忍がやってきて、同僚はそちらに向かってしまった。残されたシズネさんは「・・・・・・本当にいいのかしら?」と申し訳なさそうに聞いてきた。
「あいつが自分から言い出したことだから良いんですよ。それよりカカシさんの荷物がどうしたんですか?」
「あ、そうそう。じゃあお言葉に甘えちゃおうかしら。あのね、カカシ君にこれを届けてほしいの。自宅の方に届く様にしていたみたいなんだけど、今回任務が伸びちゃって帰還が遅くなったでしょ?それで困った配達の人がここに預けたの。報告に来た時に渡そうと思ったんだけど、ちょっと他の事に目を向けている間に、いつの間にかいなくなっちゃっていて」
「そう言う訳だったんですね」
「ええ、カカシ君お休みに入っちゃうし、出来るだけ早く届けた方が良いかなって思って」
「分かりました、お預かりしますね。もし見つからなかったら、自宅まで届けた方が良いですか?」
「うーん。そうよね。どうしようかしら。イルカ君、申し訳ないんだけどやっぱりお言葉に甘えてもいいかしら?」
「任せてください」
「本当にごめんなさいね。でもどうもありがとう、助かったわ」
 ほっとした顔を見せるシズネさんに顔を寄せると、小さな声で囁く。
「俺はついでだから良いんですよ。だったら後でアイツにお礼を言ってやってください」
(友よ、俺に感謝しろ。お礼は今度一杯奢ってくれればいいからな)
内心そう思いながら、受付作業をこなしている同僚を指差す。シズネから見かけの大きさの割には随分と軽い荷物を預かると、帰り支度と同時に同僚に頼む仕事を纏め始めた。

      *****

「カカシさん」
 書庫の壁に映るほうきを逆さにしたようなと陰で噂されている特徴的な影で一発でその人とわかる後姿に向かい声を掛ける。
「すいません、ちょっと良いですか?シズネさんから荷物を預かってますよ。任務が長引いたから困った配達の方が預けたみたいです」
「そうなんですか、すいません。色々とお手間おかけしました」
 俺の手にした荷物を見て一瞬目を見開いた後、ぺこりとお辞儀をしてみせた。
「それは、他里から何か取り寄せたんですか?」
「ええ、まあ、趣味の資料みたいなものですかね。イルカ先生わざわざありがとうございました」
 カカシさんは言葉を濁しながら、俺の持つ荷物に向かって手を差しだした。そんな彼に茶紙でくるまれた荷物を渡そうとしたが、うっかりと手が滑ってしまい荷物を落としてしまった。
 荷物が床に落ちると同時に中からカチャッという甲高い音が聞こえてきて、思わず血の気が引いてしまう。 
「すいません、カカシさん!割れ物が入っていたんですか⁈」
「あ、大丈夫です。壊れても平気な物です。気になさらないで下さい」
 慌てて屈みこみ、床から荷物を拾い上げたカカシさんの手から荷物を奪い取ろうとする。
「もし割れていたら大変です。その時は弁償します!だからここで中身を確認して貰えますか」
「いえ、本当に大丈夫ですから」
「何言ってるんですか。わざわざ取り寄せた品でしょ。大丈夫な訳ないです、中身の確認させてください」
 膝をついたままのカカシさんが小脇に抱えた荷物に手を伸ばすが、彼は「大丈夫」と小さく口にして俺から隠す様に身を捩った。焦っていた俺は包みを何とか確認しようと手を伸ばし、荷物をくるんであった紙の端に爪をかけてしまった。カカシさんが身を捩った勢いと俺が荷物を見ようとした勢いが勝攫ってしまい、爪をかけてしまった部分から包み紙はビリッと言う音共に大きく破れてしまった。
 破れた部分から幾つかの品が転がり落ちる。慌てて手を伸ばすが間に合わず、サーッと血の気が引いたのが分かった。
「すいません!ワザとじゃ・・・・・・」
 拾って傷が無いかと確認しようと手を伸ばしたが、手にする直前で思わず固まってしまう。落ちた品々を見て、俺は思わず眼を大きく見開いてしまった。
 そこにあったのは、茶紙に包まれた筒のような品、白っぽいドロリとした何かが入った手のひらサイズのガラス瓶(おそらくこの瓶がさっき落ちた時の音の原因らしい)そして数冊の本。
 それだけなら驚く事は何もないだろうが、問題はその本の表紙にあり、それぞれ本は違えども、その表紙には共通している部分があった。
 全ての表紙にはポーズや男女の差があれども、皆縄の様なモノで縛られているのだった。
 本位手を伸ばしたままの体勢で呆然としている俺に、硬い声が降ってくる。
「イルカ先生。俺は大丈夫って言いましたよね」
「カ・・・・・・こ・・・・・・」
 カカシさん、これは?と言いたいのに、驚きのあまりか舌が強張ってしまい上手く動かない。
 カカシさんは大きくため息を一つ吐くと、ヒョイヒョイと落ちている品を拾っていく。瓶を手に取りくるりと回すと軽く眉根を寄せた。
「さっきの音はこれですね。ああ、確かに少しひびが入っていますね」
「その、本当にすいません。あの、弁償するか・・・・・・もう一度取り寄せをさせてください」
 驚きのあまり強張る舌を何とか動かして何とか言葉を紡ぎだす。あの本は一体なんだ?カカシさんってそんな趣味があったのか?だから恋人はいなかったのか?と混乱する頭に気合を入れようとしていると、カカシさんの思いもよらない言葉が降ってきた。
「割れた訳では無いですし、少しひびが入っただけですし使う分には問題は無いです。所でイルカ先生。この後、少しお時間頂けますか」
「え、あの・・・・・・時間ですか?」
「ええ、お話ししたい事があるんです」
 いつもどこか眠そうなカカシさんの眼は、今はギラリと睨みつけるように俺の事を見ている。どう考えても楽しい話ではないだろう。
「俺と・・・・・・話で・・・・・・すか?」
「ええ。さっき、この後は特に予定は無いって話してましたよね」
 つい先ほど前に軽く何時もの様に誘いをかけた自分の事を恨んでみるが、どうしようもない。
「でも話ならここでも・・・・・・」
 そう言う俺に向かって、いつの間にか破れてしまった包み紙で軽くまとめられた荷物をカカシさんはもう片手で叩いて見せ、地を這うような声で、片方しか見えない眼に今まで見た事のない様な鋭い光を浮かべて俺の事を見た
「人に聞かれたくない話なんです。イルカ先生が落としたこの荷物を見ればそれ位わかりますよね」
 頭の中で警鐘が鳴り響く。何とか言い訳をしてこの場から立ち去らなければとしどろもどろになりながら話しかける。
「その、荷物の事でしたら謝ります。本当に申し訳ありませんでした。落してしまった荷物についても、えっと、弁償なりなんなりさせていただきます。あ、勿論、俺が落としてしまった荷物の中身についても他の方に言う気はありません」
 もう一度深く頭を下げたが、カカシさんは首を横に振った。
「この事だけではありません。他にも話したい事があるので長くなると思いますの。いいですか、俺と一緒に来てください」
 背筋を一筋汗が流れていく。
 蛇に睨まれた蛙と言うのはこんな状態なのかもしれない。出来れば一生知りたくは無かった状態だけど。
 何を言われるのか見当もつかないが、いつも飲んでいる時お互いに話すような軽い話ではないのだろう。

取り敢えず一つだけ分かっている事は、あの荷物を預からなければこんな事にはならなかったと言う事だけだ。

    *****

(ああ、ついにばれてしまった。しかもイルカ先生に)
 荷物を拾おうとしてそのままの体勢で固まってしまったイルカの後頭部を見ながら、カカシは意外と自分が思っていたより冷静な事に吃驚した。
 本の表紙を見ただけで固まってしまったイルカの反応を見れば分かる通り、傍から見ればぎょっとされるような趣味なのはわかっている。だからこそ今まで隠してきたのだ。
 しかもばれたのが、言うつもりは無かったが自分が以前から好意を抱いているイルカとは。
 固く口止めすれば他の人には話さないだろう。だが、カカシの秘密を知った事でイルカは今までとは逆に距離を置くだろう。
 ようやく敬語もぬけ、それなりに近しい関係になれたのにどうすればいいだろうか。
 カカシは逡巡したが一か八かの賭けに出る事にした・・・・・・。

 ただ、イルカに話すには、自分の奥底で眠っている昔の記憶を引っ張り出さなければならない。
 そういえば、この趣味の切っ掛けとなったのは何時の事だったろう?
 あれは・・・・・・確か父親がまだ生きていた時だったという事だけは確実だが、細かい所まではもう覚えていない位昔の事だった・・・・・・。
「ただいま」
 からりと引き戸を開けたカカシが家の奥に向かって声を掛けると、帰って来る筈の返事は無く家の中はしんとして、人気が無かった。
 その日は珍しく休日のサクモは、たまにはゆっくりしたいと一日家にいる筈であった。軽く眉根を寄せカカシがサクモの部屋に向うとどうやらサクモは久しぶりの休みを利用して忍具や術の本などの整理をしていたらしく、そう狭くもない部屋の中は足の踏み場が無い位に色々なもので散らばっていた。
 そこには普段目にしないような異国の珍しい術具もあり、好奇心に駆られたカカシはそろりと足を踏み入れる。
「ふうん。こんなの今までみた事ないや。一体これはどう使うんだろう?」
 手を伸ばして風変わりな忍具に触ろうした途端、雑に重ねてあった本の山にぶつかってしまったらしくバサバサと音を立て本の山が崩れていく。
「あ~、やっちゃった。父さんったら、本くらい綺麗に重ねておけばいいのに」
 小声で文句を言いながら、雪崩を起こした本の山に手を伸ばす・・・伸ばしたはずだったカカシの手がピタリと止まる。それを眼にした途端、まるで全身が稲妻に打たれたかの様な衝撃が走った。重なった沢山の本の中の一冊の表紙に眼が釘づけになってしまう。
 カカシが食い入る様に見ているその先には、珍しく表紙に写真の使われた一冊の本があった。
 項垂れ気味の男がまるで縄で縛られているのだが、その縛り方は男の体で文様の様に飾っていてまるで芸術品のようだ。

 何だこれは?!
 自分の胸が高鳴るのがわかる。思わず唾を飲み込む。
 見たい、この本が、その中身が見たい。
 他にどんなモノが載っているのか知りたい。
 
 カカシはそろそろと手を伸ばす。指先が今にも表紙に触れそうになったその瞬間、玄関先で大きな音が聞こえた。
「おや、カカシ。帰っているのかい?」
 引き戸のカラカラと言う音と共に、サクモのがカカシの事を呼ぶ声がした。ビクリと大きく肩を跳ねあがらせると触れる直前だった本の表紙からを慌てて目を逸らす。震える手で崩れた本の山から数冊取ると今まさに開こうとしていた本の上に置き、慌てて玄関へと向かった。
「お帰り父さん。どこに行っていたの?」
「すまない、ちょっと急に呼ばれてね」
「ふうん、所で部屋が物凄い事になってるけど。父さんがいるかと思って戸を開けただけで本が雪崩を起こして崩れて来たよ」
「ああ、すまない。さっきもう使わない古い書物や道具の手入れをしていたら、途中で呼び出しの式が来てね。何とかしなくちゃいけないね」
「ふうん、俺も手伝おうか?本の山崩しちゃったしさ」
「いや、明日一気に片づけてしまうから大丈夫だよ。夕飯の準備をするから手伝ってくれ」
「うん、今日の夜ご飯は何?」
 サクモの手伝いをしながら、カカシはさっきの本の事で頭がいっぱいになってしまっていた。

 次の日、カカシが出かけている間にサクモは言葉通り部屋の中を綺麗に片づけていた。
 あれだけあった書物や道具も一部を除いて処分したらしく、さっぱりと小奇麗になっていた。
 カカシはどうしてももう一度あの本が見たくて、サクモがいない隙に何度も部屋に忍び込みすみずみ探した。
 だが、あれだけあった荷物は、ほぼすべて処分されたらしく、押し入れの片隅にちんまりと残されていただけとなっていた。

 その中に、カカシが思わず手を伸ばしたあの蠱惑的な表紙の本は無く、勝手に部屋に入ってみたという事で聞きづらいという事もあってどうしたのかも聞けないままになってしまった。

 その後、あの本が何だったのかも聞けないままサクモもいなくなり、それと同時にカカシは慌ただしい毎日に放り込まれ、いつの間にかその本の事も忘れていった・・・。


    *****


 お互いに無言のまま、俺はカカシさんの後ろから歩いて行った。
 今までなら一緒に変える時は笑い声や話し声が絶える事は無かった。だが今日は恐ろしいばかりの沈黙が二人の間に横たわっている。
 幾ら個室があったとてもまさかこんな状態で、居酒屋にはいかないだろう。恐らく以前飲み足りなくて一度だけ行った事のあるカカシさんの部屋に行くのかと思っていたが、彼はどんどんと里の外れの方に向かっていく。
「着きました」
 立ち止まった一軒家の前で、短く一言告げられる。
 侵入者用の結界が張ってあるらしく、幾つか印を結んで解除すると門を押し開け中に入って行く。
「こ、こは?」
「俺の別宅です。ここで話しましょう。どうぞ中へ」
「失礼します」
 小さくそう言うと、恐る恐る後ろをついて歩いて行く。物珍しさもあり少しきょろきょろしながら等間隔に並んだ敷石を踏んで歩いていく。
 見た感じ、そう大きいとはいえない平屋の戸建てだったが、お隣との境を示す塀の高さが俺の身長くらいありそうだ。そんな事を考えながら歩いていると、玄関の引き戸を押さえたカカシさんと目が合った。
「どうぞ中へ。すみませんがそのまま上がってください」
「お邪魔します」
 小さく呟いて玄関の中に入る。かちゃりと鍵をかけたその音が、やけに大きく耳の中に響いた。
「座布団も何もないですが、どうぞ座ってください」
座ってきょろきょろと見回すと、おそらくここはこの家の居間にあたる部分なんだろう。しかし人が住んでいるのかと思うくらい殺風景で、飾りと言えば俺のすぐ後ろにある壁に壁時計位で、家具と言えば小さな整理箪笥と座卓位しかない。  
カカシさんも俺の正面に座り、二人の間に先程の荷物を並べてみせる。
 俺がヒビを入れてしまった白いとろりとしたモノが入った瓶。・・・・・・縛られた人が表紙の本が数冊。カカシさんが茶紙の筒のようなモノをぺりぺりと開けると、そこには何故か縄が入っていた。
「縄・・・・・・ですか?」
 思わず呟くとカカシさんは「少し昔の話をします」と話し始めた。
 
 その後カカシさんから聞いた話を纏めると、彼は昔、サクモさんの部屋にあった(多分)緊縛術の本を読んで性に目覚めたようだが、その時には良く分からないままだった。
 その後、まあなんやかんやで普通に色恋沙汰も経験してきたが、どうも満足いかなかったそうだ。
 そんなある日、任務先の花街で大きな捕り物があった。その時所謂SM系の店がありカカシさんはたまたまそこの担当だった。

「俺はその時客として潜入するのでは無く、店内で暴れたりする奴がいたらすぐ捕獲できるように、と少し離れた所で待機していました」
 カカシさんは淡々と話を続ける。
「店の中で誰かが大声で叫んだかと思うと、一気に騒がしくなりました。店の中で運動会でもしているんじゃないかと思うくらいの大騒ぎの後、次々と客達が店の外へと引きずり出されるのを少し離れた場所からじっと見てました。そのあたり一帯で阿片を使用して客に貢がせていたが、そのうちの一人がお忍びで来ていた大名で問題が大きくなったそうです。宿屋町の事だったので、あちこちの里から腕利きの忍びを集め徹底的な殲滅作戦の計画されました。芋ずる式に捕まった犯人たちを何人か見送った後と、ある一人の人が出てきたんです」
「どんな人だったんですか?」
「顔は覚えていません。でも男が真っ赤な縄で縛られていていました。それを見た瞬間、子供の頃の出来事を思い出し、お恥ずかしい話ですが今までに無い位興奮したんです」
 カカシさんは眼を細めた後、顔を少し赤らめた。
「それから先はあっという間でした。緊縛術や緊縛についての書物を読み漁りましたが、あの本はどこにもありませんでした。木の葉の里の物では無いかと思いそれで任務で里外に出た時、探しているのですが、今でも見つかっていません。そのまま緊縛に興味が出てきたのもあり、そう言った道具を購入して送ったりしているんです」
 まさか今回は任務にあんなに時間がかかると思わず、失敗しちゃいました。カカシさんはそう言うと少し笑ってみせた。
「カカシさんは、その・・・・・・SMで言えばSなんですか?」
「あーそうじゃないんです。そう言った店にも言ったりして試してみましたが、SMには興味はありません。あと、最初のインパクトが強かったせいか、女の人が縛られていても興味がないみたいですね」
「へえ、そうなんですか」
「緊縛もですが、それに使う道具を作るのが趣味ですね。時折任務上で役に立っている縛り方なんかもあるんですよ」
「役に立つ?縛り方は判りますが、道具を作る事もですか?」
「知りたいですか?」
「ええ、普通拘束するのには縄などを使い、手首を固定したりするやり方が一般的ですよね」
「はい、そうですね。俺もアカデミーでそう教えています」
「では、貴方の今髪を結んでいる髪紐を使い、手のひらから下だけで拘束は出来ると思いますか?」
「俺の髪紐ですか?手のひらから下って、それは流石にカカシさんでも無理なんじゃ・・・」
「普通はそう思いますよね。でしたら試してみましょうか?」
「え?別にそんな事しなくても」
「折角ですからやってみましょう」
 カカシさんは音もなく立ち上がると、俺の横に来た。スッと俺の頭に手を伸ばすと、抵抗するまもなく髪紐を解かれ、髪は重力に従ってパサリと広がる。
「手を後ろに回してください」
 カカシさんの強い声に逆らう気が起きず、渋々ながら手を後ろに回す。
「じゃんけんのパーの状態で親指を少しかさねてください」
 言われた通りにすると、親指を重ねた部分を何度か髪紐で結わえている感触があった。
「できましたよ」
「え、もうですか?」
「ええ、もうです。どうぞ動かしてみてください」
 にっこり微笑みながらそう言われ、何度か手を動かしてみる。親指の根元の辺りを結んであるだけなのに、不思議な位身動きが取れない。
「本当に不思議な位身動きが取れないですね」 
ムキになって手を動かしていると、カカシさんが俺の事をじっと見ていた。
「どうかしましたか」
「イルカ先生。俺は貴方の事が好きなんです」
「・・・・・・は?」
 思わずそう答えてしまった俺は悪くないと思う。
「俺もカカシさんの事が好きですけど」
「イルカ先生の好きは友人や同僚に対する好きですよね」
「カカシさんは違うんですか?」
「俺は貴方を抱きたいと思ってます」
「はあっ?!抱くって、抱っこするんですか」
「いえ、セックスする方の抱くです」
「いやいやいや、ありえないです。あの、って事は、さっきの話みたく、俺を縛ってみたいとか、そう思ってるんですか」
「勿論です」
 思わず後ずさるが、正座した状態でしかも手が使えないため後ろに倒れこんでしまう。そんな俺の横に伸し掛かってきたカカシさんは片手を着くと、もう片手で俺の性器を抑え込んできた。
「ヒッ」
 短い悲鳴を上げ逃げようとするが、不安定な体勢な上に手が使えない。くにくにと揉みこむように刺激され、あっという間にズボンの上からでも勃っているのがはっきりわかる位硬くなってしまった。
「止めてください、恥ずかしい」
 顔を背けようとすると、股間に置かれていた手はようやく外されたが、代わりに顎を掴まれ正面に向けられた。
「別に恥ずかしくないでしょ。生理現象なんだし」
「生理現象って、カカシさんのせいじゃないですか」
「後ろ手に縛られて・・・・・・俺一人こんな格好で」
 そう言いながらカカシさんから顔を背けると、顎を掴んでいた手は簡単に外れたが、今度はカカシさんの顔が近付いて来た。
「こんな格好で・・・・・・何ですか?ねえ、自分だけが勃っているのが恥ずかしいんですか?だったら安心して。俺ももうこんなになっているんで」
 そう言うと同時に、自分の腰を俺に擦り付けてきた。ズボン越しでも十分にわかるその膨らみと固さにヒッと喉を鳴らしながら思わず後ずろうとするがその場でもたつくだけだった。そんな俺の姿を見ながら、カカシさんは艶然と笑うと、更に腰を強く押し付けてきた。
「ほら、同じなら恥ずかしくないでしょ?」
「は、恥ずかしいに決まってます!止めてください」
「でもさそんな事言っても、ココはさっき俺が触っていた時より更に固くなっている気がするんだけど」
 腰を押し付けるのをようやく止めてくれたと思ったら、今度は片手で又性器を包み込まれ、そのまま上下に手を動かしてきた。
「わかりました、生理現象です。生理現象だからほっとけば収まります。もう帰りますから手の縄を解いてください」
 叫ぶように言うと縛られた手を解いて貰おうと横を向こうとしたが、くるりと元に戻された。何をされたのか一瞬理解できなくて、思わずポカンと口を開いてしまう。
「は?カカシさん、一体何を・・・・・・」
 何が何なのか理解しきれない俺の問いかけに答えは無く、代わりに腰の辺りに手が伸ばされる。ハッと我に返り腰を引こうとするが、カカシさんの動きの方が早く片手を腰に回され今まで以上に強く硬くなった性器を押し付けられた。
「だから、止め・・・・・・フ・・・・・・ンッ」
 何とか逃れようと頭を反らすと、喉仏をカプリと軽く噛まれた。急所を掴まれているゾワゾワとした感触と、リズミカルに擦りつけられ布越しに感じる快感が入り混じって思わず鳥肌がたってしまう。
 ビクリと体を震わせると、擦りつけられていたカカシさんの性器のくびれた部分がまた違うところに当たり思わず背を反らす。それをのげ出そうとしていると勘違いしたのか、軽く噛んでいた喉仏から今度は耳朶を噛んできた。
「んっ、あっ、イ・・・・・・きそう・・・・・・かも」
 カカシさんの吐息交じりの息が首筋に当りゾワゾワする。身を捩ろうとすると、肩口に頭が摺り寄せられる。認めたくないがありえない状況に俺自身も興奮して、全身が性感帯のように敏感になっていて、カカシさんの髪が首筋に触れる位でも反応してしまう。耳の傍でハッハッと言う犬のような荒い息に、時折短い悲鳴にも似た低くてどこか甘さを含ませたカカシさんの喘ぎ声が聞こえ、頭の中で響き渡っている。もう限界寸前だった。
「あ、イク、あ・・・・・・・」
「イ・・・・・・く。あ、イルカ先生・・・・・・俺もイクから」
 俺の声に思わずびくりと体を震わせたカカシさんに耳元で囁かれる。
それと同時に、いきなりカカシさんが腰をくねらせながら俺の股間を強く擦りあげてくる。その思わぬ強い刺激に短い悲鳴のような喘ぎ声をあげてるとそのまま俺はイってしまい、カカシさんも数回腰を押し付けるようにした後、「ウッ」と小さな声を上げてイッた。
 ビクビクと二人して体を震わせた後どうにも力が入らず、俺はそのまま横向きに寝ころんだ
 暫くの間室内には荒い呼吸音が響いていたが、カカシさんがポツリと話し出した。
「イルカ先生。さっき俺に道具を作ることも趣味ですか?って聞いてきましたが、どんな時に道具を作るか分かりますか?」
 声を出すのも彼の方を見るのも面倒で、首を横に振ってそれに答える。
「人を殺める様な任務をこなした時です」
 カカシさんはさっきまでの上ずった声が嘘のように、淡々とした声で話を続けた。
「人によってはそう言った気持ちを落ち着かせるために酒を飲んだり、女を抱いたりと色々あると思います。俺にとっては緊縛用の縄を作るのが、高ぶった気持ちを落ち着かせるための行為なんです」
「何で縄を作ると落ち着くんですか」
 ぼーっとしたまま思った事を思わず口にしてしまう。
「何でか知りたいですか?」
「知りたいなら覚悟が必要です」
 そう言いながらカカシさんは親指を拘束していた髪紐をようやく解いてくれた。
カカシさんが話している間に少しだけ頭の中がクリアになった気がするが、強い酩酊感はいまだに抜けないし、手は痺れているし、吐精してしまった下着はぬちゃりと重く湿っているがどうしようもない。
「・・・・・・俺、帰ります」
そう言って立ち上がると髪紐を渡されたが、今更髪も結び直す気力もない。取り敢えず胸ポケットにしまい、手櫛で髪を整え玄関へ向かった。
「イルカ先生」
 ふと影が差し振り向くと、カカシさんが俺の事をじっと見つめていた。
「イルカ先生に覚悟が出来たら、三日後の貴方の休みにまたここに来てください。俺はそれまでに、この縄を貴方の事を思いながら何度も煮鞣して、貴方が落としてヒビを居れてしまったこの瓶のオイルを使って何度も鞣し、貴方の肌に触れても痛くないように毛羽立ちの処理もしましょう」
「だからさっきも言いましたが、何で縛る前提で話をするんですか。覚悟って何ですか」
「俺がそうしたいからです。覚悟はアナタが俺の事を知る覚悟です」
 苛立ちから噛みつくようにそう言うと、カカシさんは少し目を伏せた後、きっぱりとそう言った。
 今まで見たことが無い位真剣な顔に、思わず息が止まる。
カカシさんはそんな俺の事をじっと見つめていた。
「ここに来たら俺は知りたい事が分かるんですか?カカシさんの事を知る事が出来るんですか?」
 少し躊躇いながらそう聞くと、カカシさんは深く頷いた。
「ええ、勿論です。それを知る代わり、俺はイルカ先生の事をいただきます」
「いただくって・・・・・・俺は物じゃありません」
「分かってます。だから覚悟が出来たら来てくださいと言ったんです」
「そんな、等価交換ですらないじゃないですか。馬鹿馬鹿しい」
 勢いよく引き戸を開けると小走りで門を潜りぬける。

 空はいつの間にか黒い雲に覆われ、ゴロゴロとどこからか低い音が聞こえている。そちらに目を向けると黒く覆われた空に時折閃光が走る様子が見えた。
 少し冷たい風がどこからか土の匂いを運んでくる。
 この様子だと、もうすぐこの辺りも激しい雨が降り始めるだろう
 腹の底にまで響くような重低音が鳴り響き、その合間合間に真っ黒な空を寸断するかのような光が走る。
 俺の心の中みたいに真っ黒な雲が広がる空の下、俺は家へと向かいがむしゃらに走り続けた。

 気付いたらいつの間にか家に帰りついていて、俺はぼんやりと床に座り込んでいた。下着の中はカカシさんの手で吐精してそのままだから、ぐちゃぐちゃのままで、下着に染みた部分が段々乾いてごわごわと硬くなってきたのか、呼吸をしたり身動きするたびに肌に触れると痛い。  
 まだ何があったのか理解しきれない頭の片隅では風呂に入って明日に備えなくちゃと考えているのに、体はさっきの余韻をまだ感じているかのようにどこか甘く痺れたようになっていて、上手く動かすことが出来ない。
 外は本降りの雨で時折雷が光っている。
 ふらふらと立ち上がり電気もつけ、何気なく壁に掛けてある時計の方にノロノロと頭を動かすと、そのすぐ下に貼ってあるカレンダーが目に飛び込んできた。
 そこに書かれた赤い丸は自分の休日を忘れない為で、自分自身で書いたのは良く分かっている筈なのに、先程の言葉を思い出しては思わずカッとなって目を逸らし何度も頭を振ってしまう。
「イルカ先生に覚悟が出来たら、三日後の貴方の休みにまたここにいらっしゃい」
 耳の奥に、あの時甘く囁いたカカシさんの声が聞こえた気がした。
「俺はそれまでに、この縄をなめしておきます。貴方の事を思いながら何度も煮鞣して、貴方が落としてヒビを居れてしまったこの瓶のオイルを使って何度も鞣し、貴方の肌に触れても痛くないように毛羽立ちの処理もしましょう」
 思い出した途端に背中にブワリと鳥肌が立ち、同時に下半身に熱が集まって行く。乾いて幾分強張った下着をまた持ち上げていく。
 何でカカシさんは俺にあんなことを言ってきたんだ?
 何でイク時にあんな切なげに俺の名前を呼んだんだ?
 分からないし、分かりたくない!
 
 そう思っている筈なのに、今まで聞いた事もない様な甘い声で俺の耳元で囁きながらイッたカカシさんの事を思い出した途端、また全身を甘く痺れる様な不思議な感情が駆け巡る。
 
 それがカカシさんに、下着の上から手でイカされたというある意味不名誉な事からくる嫌悪感によるものなのか。
 
 それともその時に彼に与えられた快感からくるモノなのか分からない。
 取り敢えず今の俺は、そんな事を考える余裕は無く、体を丸めて体の中に湧き上がった衝動をやり過ごそす事で精一杯だった

     *****


 イルカがまるで何かに取りつかれたかのように走り去ったのを見届けた後、カカシは向きを変えて台所へと向かった。

 ガランとして生活感の全くない殺風景なそこには、一人暮らしの家には不釣り合いなほどの大きな鍋が置かれていた。

 この家にある唯一の調理器具だが、調理には使われた事のないその鍋を持ち上げて流しの中へと置く。金属同士の触れあう甲高い音を聞きながら片手で蛇口をひねると、深さがある鍋の中に水がじわじわと溜まって行く様子をぼんやりと眺めた。半分ほど水が溜まったところで、コンロの上に乗せたが、火は付けないままであった。
 そのまま先程までイルカと一緒に居た部屋に戻ると、室内にはまだ吐精後の独特の青臭いような匂いが漂っていた。 彼のモノと思えば不快ではないが、この後の事を考え大きく窓を開ける。
 体の中に渦巻いていた熱はイルカと共にどこかに消え、開いた窓から吹き込む風に少し肌寒さを感じるが、この後縄を煮ていくとどうしても独特の匂いが出てくるから、どちらにしても空気の入れ替えはしなければいけないし、肌寒さはそのうち慣れるだろう。カカシは吹き込む風にふるりと身を震わせると、先程の荷物の元へ向かった。
 屈んで縄を取ると、纏められていた紐の結び目を解く。縄を手に取り大体の長さを目安で計った後、ホルダーからクナイを取り出すとプツリと切る。クナイをホルダーにしまいながら引き出し向かうと、縄を煮出す前に使う道具を取り出し座卓の上に置いた。
 座卓の脇に座り胡坐をかくと、膝の上に先程切った縄を乗せた。手を伸ばし座卓の上に置かれた道具の中からピンセットを取ると、屈みこんで縄の表面に混じっている麻の皮を丁寧に取り除いていく。
 縄はそのままでも使えるものだが、こういった細かい作業をしていると、血を見る事で、他者の命を屠る事であらぶっていた心が落ち着く気がする。
 何時からかはわからないが、縄の細かい汚れを取り除く事ささくれ立った心の棘を、縄を煮出す事で自分の心の中に溜まったどす黒い気持ちを排出しているような気持になっていた。
出来上がった縄は使うことなくいつも処分していた。それで誰かを縛ろうと思った事は無い。この趣味に目覚めてから何度かそう言った趣味の人達が集まる店に言った事があるが、柔らかな女の体に食い込む縄にも、かといって縛られ痛みを与えられ喜んでいる男にも興味は沸かず興奮もしなかった。
 我ながら良く分からないが、きっと子供に見たあの本の表紙のインパクトが強すぎたのだろう。任務後のあらぶった心を落ち着かせるのに一番向いているのがこの方法だと分かってからは、ばれないように遠方の任務先に向かった際にそう言った品々を購入するようにしていた。
 今までもそれなりに丁寧に処理してきたが、今日のは彼の体を縛るものになるかもしれない。そう思うと今まで以上に取り除く作業に熱が入った。
 片手で少し疲れた目元を押さえながらピンセットを置くと、今度は更に小さな糸巻を手に取る。
 適当な長さで歯の先で噛み切るとポケットにしまいそれを縄の端に幾重にも巻きつけて縄が端から解けないようにした。
 クルクルと鍋に入る位の大きさに丸めると椅子から立ち上がり台所へと向かう。水を張って置いた鍋に縄を沈めると、カチカチと小さな音を立てて火をつけた。
 透明だった水が徐々に色を変えていく。透明からあめ色に、そして茶色に。時折浮いてくるゴミや灰汁を取り除きながらその様子をじっと見つめる。
 底が見えないような濃い茶色になったら、鍋を持ち上げ流しに汚く濁ったお湯を捨て同じことを繰り返す。
カカシは手慣れた様子で作業を進めていった・・・。

     *****

 縁側に置いてあったサンダルを突っかけるとカカシは裏庭に回る。風通しが良いその場所の軒下にあるフックには、本来ならばある筈の物干し竿の代わりに、カカシが念入りに余計な麻の皮を取り煮出した縄が吊り下げ乾かされていた。
 三回ほど煮出し、それ以上タールが染み出さなくなった位煮た縄は、最初の頃より格段に柔らかくなっていた。そうやって作って陰干ししてあった縄を手に取り、念入りに乾燥しているかどうか確かめる。  
 雷が通り過ぎた後は天気が良く、空気も乾燥していたせいか、触った感じ中心部までしっかりと乾いていそうだ。
 軽く丸めた縄を手に取り部屋の中に入り台所へと向かう。乾燥した縄の表面には細かな毛羽立ちが無数にある。その上からなめしても良いのだが、カカシは折角ならばと細かな毛羽立ちを焼いてしまう事にしていた。
 表面の毛羽を焼くのはガスコンロだ。
最初はどこまでやれば良いのか分からずに、縄の表面を焦がしてしまう事も多かった。だが何度も繰り返すうちに、今では上手く一定間隔で左右に動かして全体を焼く事が出来るようになった。
同じ個所に火を当て過ぎると焦げてしまうので注意しながら丁寧に毛羽を焼き、水に濡らし固く絞った軍手で縄をしごくと細かい燃えかすやススが取れていく。
 軍手越しの掌が熱く感じる程勢いよく何度もしごき上げ擦り落とす。

 最後の仕事は多少汚れる場合も有るからと、前もって床の上に広げておいたシートの上に縄を一旦置くと、引き出しを開け他の道具を用意する。
 軍手をはめると、この前イルカがヒビを入れてしまった瓶のふたを開け指を揃えて中身を掬い取る。
その中身は蜜ろうだ。
 指先を擦り合わせその感触を確かめるが、思ったよりも柔らかめだな・・・と感じた。
 今度は手のひらに蜜ろうを乗せ体温で温めると薄く伸ばし、縄に塗り込んでいく。手のひらに触れる感触で毛羽やゴミなどがないか確かめながら、カカシは黙々と縄に蜜ろうを塗っていく。塗っては馴染ませる様に縄に擦り込みしごき、何度も何度もそれを繰り返す。最初はべたべたした感じがあったが、縄に油が馴染んでいくと表面のベタつきが無くなり、自分の手に馴染んでくるのが分かる。
 出来上がった縄を手に取ると、最初と違い自分の手に吸い付くかのようにしっくりと馴染んでいるのが分かる。
 今までカカシは馬油を使って縄をなめしていたが、購入した本に馬油は馴染ませやすいが若干の匂いもあり好みも分かれる。蜜ろうだと若干固めであるが匂いも時になく、縄も柔らかく仕上がるというのを知った。木の葉の里でも扱っているが、縄をなめすとなると、それなりの量を使う。
 任務先で見つけ、すぐに買い求め送ったが、送った時はまさかこんなことになるとは夢にも思わなかった。
 この縄を実際に使うかどうかは分からない。自分でも強気な発言だったと思うが、下手したら縁を切られてもおかしくないだろう。
 でも自分で自分を止められなかった。カカシが幾度も夢に見た光景が目の前に広がっていた。指を縛られ言葉で軽く辱めるだけでイルカは羞恥で身悶えていた。そんな姿を見るだけで興奮して思わずイキそうになった。
 


 彼は来るだろうか?

 もし来たとしたら、自分の手の中に囲い込んでしまえるのなら、きっと俺はこの先彼の事を手放すことは無いだろう。

 そんな事を思いながら、カカシは仕上がった縄をただじっと見つめていた



    *****


 子供の頃、俺は空に浮かぶ月が怖かった。
 星や太陽と違い、毎日形を変えていく。
 夜道でふと後ろを振り向くと月が後をついてきていた。
 ぎょっとして走って逃げようとしたが、どれだけ頑張って走っても、背後から月が追いかけてきた。いつか追い付かれて飲み込まれるんじゃないかと思っていたが、無性にそれが欲しかくなった。
 怖いけど綺麗。追い付かれそうなのに、手が届かない。相反する感情に心が揺らいだ。
 どんなに手を伸ばしても届かない月にどうやったら手が届くのかと子供ながら考えた結果、水に映る月ならば手に入れられるんじゃないかと思い、バケツに水を張って庭に置いておいた。
 両親が寝静まった頃、そっと寝床を抜け出し庭に出た。バケツの中を覗きこむと、真っ黒な水の中にキラキラと輝く月が写っていた。
 月は蒼く光り、まるで氷の様に黒い水の中に浮かんでいた。
 これならきっと手に入れられる!そう思って嬉しさに口元を緩ませながら両手を揃え、そっと水の中に入れる。パシャッと小さな音共に水文が広がり、月はゆらゆらと揺らめきながらその姿を歪に変えた。慌てて掬い上げると、手の中にあるのは水ばかりで、下を見ると掬い上げた筈の月はゆらゆらと形を変えながら、まだそこにあった。もう一度両手を揃え掬い上げようとするが、掬った筈の月は又手のひらからすり抜けてしまった。
 苛立ち地団太を踏んでバケツをひっくり返すと、今度は庭に出来た水たまりに月はいた。
 慌てて手を伸ばしたが、水はどんどん地面に吸収され、伸ばした手は又届かなかった。
 カカシさんは掴もうとしても掴めない、とらえどころのないあの時の月みたいだ。月は掴むことが出来なかったが、カカシさんの手を取る事は出来る。むしろ俺の事を捕まえようとしている。
 怖い、でも怖いだけじゃない。捕まりたくない、でも捕まえたい。
 知りたくない、でも知りたい。
 頭の中でぐるぐる回る相反する感情を整理すべく、俺はゆっくりと目を閉じた。



 門を開けゆっくりと歩いて行くと、引き戸の磨りガラス越しに見慣れた髪型の影が映った。
 ここに来るまでにさんざん迷ったし、さんざん考えた
 カカシさんが俺の事を好きだと言って吃驚したが嫌では無かった。これがもしカカシさんで無かったら「冗談言うなよと」笑ってごまかしていただろう。
 カカシさんの事は嫌いでは無い。むしろ好意しか感じていない。
 指を縛られ自慰行為の延長のような事をされ吃驚したが、嫌では無かった。と言うか、今までで一番気持ちが良かった。
 俺がカカシさんを受け止める事で、これから自分がどうされるのか、どんな事をされるのか、その先に何があるのか全く分からない。
 今までにあった事のない様な、今までの自分が壊されるような目に合うのかもしれない。
 この年になって自分の中の何かが変わるという事が怖くない訳は無いが、そのきっかけを作ったのは自分なのだから最後まで進んでみよう。
 自分の中で最後はそんな風に考えがまとまったのだ。

 その影と気配でそこにいる事は判っていたから「カカシさん、そこにいるんでしょう?」と声を掛ける。
「鍵は開いています。どうぞ中へ」
 引き戸をゆっくりと開ける。
「覚悟は出来たんですか?」
 玄関にはいるなりそう聞かれ「はい」と短く返事を返した。
「貴方の事を今日は抱きません。でも代わりに縛りますが、それでもいいですか」
「構いません。そのつもりで来ました」
 真っ直ぐにカカシさんの目を見つめて言うと、小さく頷いて「上がってください」と言われた。
 この前通された居間に着くと、トントンと指先で胸の辺りを叩かれた。
「イルカ先生。この中にシャツは着ているんですか?」
「あ、はい一応ノースリーブのシャツを着てます」
 そう答えるとカカシさんは少し考え込んだ。
「本当なら素肌に縛るのが良いんですが、イルカ先生はアカデミーの授業で体術とかもありますよね。縄はなめしてありますし、そんなにきつく縛らなければいい話なんですがどうしますか?」
 そう話すカカシさんの目を見てきっぱりと答えた。
「カカシさんが一番いいと思うやり方でやってください。俺にはそう言った知識も全くないですし、分かりません。俺の事を好きだと言うなら酷い事はしないと思うし、嫌だと言えば止めて貰えると信じていますから」
 俺の言葉に眼を見開いたカカシさんはゆっくり頷いた。
「分かりました。じゃあシャツも脱いで、下着だけになってください。初めてですし、今日は簡単な結び方にします」
 この前と違い淡々と説明しながら縄を用意するカカシさんの姿を見て、俺はこれから足を踏み入れる世界の事を思ってゴクリと生唾を飲み込んだ。


 静かな室内に俺とカカシさんの荒い息と、縄の縛るときのギシギシと言う音が響いている。
 時折カカシさんにが「痛くはありませんか?」と問いかけられるが、俺は首を横に振ってそれに答える。
 手首を固定し、腕ごと胸の上下を縛る。カカシさんは迷うことなく俺の事を縛り上げていった。
 最初に縛られた腕は手首同士で固定され動かせないようになっていて、腰の辺りで固定されているせいか、少し胸を張ったような状態になっている。
 思ったよりもきつくないし、アカデミーで使う捕縛用の縄と違い表面がなめらかな感じがして、肌の当たりも滑らかだ。

 少しずつ少しずつ、カカシさんに縛られ絡め取られていく・・・・・・。

 カカシさんは縄を胸の前に通して何やら作業している。縄で縛るのはやはり大変なのか、息が荒くなっていて、時折熱い吐息が肌に当たるし、少し動くと猫っ毛気味なふわふわとした髪が肌を擽るしで、思わず声を出しそうになってしまう。
 薄らと鼻の頭と額に汗をかいて、興奮しているのか顔もうっすらと赤くなっている。一緒に飲んでいるから素顔は見た事があるが、ここまで近くで見たのは初めてだ。
「出来た・・・・・・」
 カカシさんは小さく呟くと、満足そうに溜息を一つ吐いた。
「イルカ先生、自分でも見てごらん」
 そう言って背中を押されて行った先には大きな姿見があった。
 そこ映っていたのは、まるで縄で綺麗に包装されたような自分だった。
 予想はしていたけど自分自身なのにどこか艶めかしく見える。
 鏡に映っているのは自分自身なのに、余りにも非日常的な姿に興奮してしまう。浅く息を吐きながら自分の姿に思わず唾を飲み込むと、喉仏と縄に縁取られた胸が軽く上下した。
 自分自身の姿に息を飲むと同時に、興奮からか上半身から首筋、顔まで赤く染まった。

 そんな俺の後ろから、するりと白い手が回されしっかりと抱きしめられた。
 ああ、俺は彼に囚われた。
 蜘蛛の糸の様に縄に絡め取られ、美しい月のような男に捕えられた。
 パズルのピースがあったかのようにその事がストンと胸に入り込んだ。
 ただ蜘蛛と違うのは、俺は自らそこに中に飛び込んだのだ。
 鏡に映る俺の姿を見て、カカシさんは嬉しそうに呟く。
 「イルカ先生は結構しっかりと肉が付いているから、こうやって縄で胸を縁取ると少し盛り上がって胸の形がしっかりわかるね」
 後ろから俺の事を抱きしめていたカカシさんの両手がするりと胸元に伸びる。そのまま脇から胸の肉を持ち上げ軽く数回揉んできた。
 思いがけない行動にビクリと体を震わせると、カカシさんはもう一度同じ事を繰り返し、さっきよりも少し強い力で胸を揉んでくる。縄が体の表面を滑る微か摩擦と、揉まれた事でどこかくすぐったい様な不思議な感触に思わず短い吐息のような喘ぎ声が出てしまう。
 その声を聞いてたカカシさんは俺の胸を寄せるように揉む手を一瞬止め、今度は肌の上を滑らせてきた。胸の真ん中を分ける縄の辺りまで滑らせてはゆっくりと戻り、又胸の肉を寄せるように数回揉んでから又ゆっくり滑らせる。

 浅く吐いていた息はいつの間かカカシさんの手の動きに合わせるかのように浅く深く乱されている。時折指先が胸の先端を掠める。ただ撫でられているだけなのにそこはいつの間にか固く尖っていて、カカシさんが気まぐれにそこを撫でると、くすぐったい様な、弱い電流を流されたようなビリッとした感じがして思わず息を飲んでしまう。
 何度も胸を擽られるかのように触られているうちに、段々と腰のあたりがじんわりと重くなってくる。腰を引いてその感触を誤魔化そうとしても、後ろにはカカシさんがいる。
 気持ち前のめりになって誤魔化そうとしたら今度はカカシさんの手に自分の胸を押し付ける様な形になってしまった。
「なに、イルカ先生。もっと触って欲しいんですか?」
 喉を鳴らす様にくつくつと笑った後、カカシさんは耳元で囁いてくる。唇が耳朶にかすかに触れる感触に体を震わせると、又胸を手に押し付けてしまう。
「カカシさんが変な触り方するから」
「触られるのが気に入ったなら、今度はどんなふうに触って欲しいか言ってください」
 片手は胸を三角に縁取る縄を指先で辿り、もう片手は指先で胸の先端に軽く触れながらカカシさんはそう尋ねてきた。
「どうって・・・・・・言われても・・・・・・」
 指先で胸の先端を弾かれ、キチンと返事が出来ない。触ってくる掌が気持ち良くて上手く考えれない。
 腰のあたりに溜まった熱は形を変え、今ではすっかり下着を押し上げてしまっている。
「言わないんだったら、今日は俺の好きにさせてもらいますよ」
 そう言うと同時に縄の跡を辿っていた手は下半身へと延び、すでに硬くなっていた性器を包み込んで擦りあげた。
胸元にあった手は俺の頬を押さえ、後ろへと振り向かせる。そこにあるのがカカシさんの顔だと認識する前に唇が柔らかい物でふさがれた。
 ぬるりと舌が唇を割り開き歯列を辿って行く。下着の上から性器を擦りあげていた手が下着の中へと入ってきた。思わず口をひらくと同時に、口腔内に自分のモノよりも少しヒンヤリと舌が入り込み、俺の舌を絡め取った。
 下からはぐちゅぐちゅと言う水音と共に、性器が擦りあげられている。もう片方の手で下着をずらされた。この前の様に両手で扱かれるのかと思ったら、その手はいきなり胸の先端を抓みあげてきた。
 時折先端の張った部分を手のひら全体で撫でられたり、そこにある穴を指先で穿る様にされ思わず離れかけていた唇に噛みついてしまった。
 慌てて離すが、自分のモノでは無い鉄の味がじんわりと口の中に広がる。だがそんな事はお構いなしにカカシさんは唇を重ね、更に強く竿を扱き上げてきた。口は塞がれ舌を絡め取られ、上手く呼吸が出来ない。イク寸前で力が入らなくて膝がガクガクと震えてくる。そんな俺の様子が分かったのか、思いきり舌を吸い上げられた。それと同時に胸をいじっていた手を離し、性器の先端にある穴をグリグリ刺激され、俺はあっけなくイッてしまった。
 カカシさんは俺の向きをくるりと変え俺の事をじっと見ているが、吐精後の頭はボンヤリとしていて上手く働かない。
 俺の姿を見て艶やかに微笑むカカシさんの口元は、俺が噛みついたせいで出た血が、まるで口紅の様に鮮やかに唇を染めている。にんまりと笑った彼の顔は陰になって良く見えないが、満足げに細められた目が、口元がまるで上弦と下弦の月のようだ。
 
 ・・・・・・ああ月だ。月がある
 
 あれだけ捕まえようとした月は、こんなに近くにあったんだ。
 手を伸ばせばすぐ届く、こんなところに。
 なのに今の俺は手は縛られてしまっていて伸ばすことが出来ない。
 欲しい。この月が欲しい。これは俺だけの月だ。
 やっと見つけた。

 この手の枷が外れたら今度こそ手に入れる。
 水に映る月では無い、俺だけの月を今度こそ捕まえるんだ。
 
 上手く働かない頭の中でそれだけぐるぐると考え、俺は目の前の月をじっと見つめていた
  
   *****

 熱に浮かされた様な潤んだ目で自分の事を見上げてくるイルカの向きを変え自分に凭れかからせると、カカシは抱きしめるような格好で手首を拘束していた縄を外していった。
 そのまま体を縛り付けている縄を解くと、イルカの肩を押して少し距離を取る。イルカはまだどこかボンヤリとした様子ではあったが、ようやく自由になった手を何度か振ったり肩も軽く回したりしていた。少し動かしたことで縛られていた強張りも取れたらしく、ふうと大きく一つ息を吐いた後、真っ直ぐにカカシの事を見つめる。
「カカシさん」
 少し掠れた声でイルカはカカシに向かって囁く。カカシに近付こうとして足がもつれたのかよろけてしまい慌てて抱きとめると、イルカはそのまま縋り付いてきた。
 さっきまでは縛られていたし、その前は半ば強引に自慰行為に及んだため、イルカがカカシに向かって手を伸ばすことは無かった。イルカから抱きついてきたのは初めてだ。
 彼の腕に縛られると、まるで子供の頃に初めてあの本を見た時の様に全身に稲妻が走ったようなビリビリと感じ、酩酊感にも似たトロリとした何かに体が包まれ、カカシは思わず目を細め満面の笑みを浮かべてしまう
 そんなカカシの事をイルカはじっと見つめていたかと思うと「ああ、やっぱりそうだ。こんな所にあったんだ」と小さく呟きカカシの顔に手を伸ばしてきた。 
 カカシの頬にそっと手を添えると逃すまいと言うかのように勢いよく顔を近づけ荒々しく口付けてきた。
角度を変えるために少し離れた唇が再び触れ合う寸前にイルカは「カカシさん・・・・・・もう一回・・・・・・してください」と吐息交じりにささやき、同時に下半身を強く擦りつけてきた。
 カカシは思わず唾を飲み込むと、片手で腰を引き寄せ自分の下半身を押し付けた、
「そんな可愛い事言うと、一回じゃ終わらないですよ?俺は貴方の事をもっと色々なやり方で縛ってみたいし、自分で知らないようなところまで触れたいし色々な事をしたい。きっとあなたが考えている事のもっとずっと先まで行くけどイルカ先生はそれで良いんですか」
「・・・・・・それを俺が決めていいんですか?俺はまだ何であなたが縄を作るのかを、何で俺の事を好きになったのかを聞いてません。お互い甘ったるい雰囲気何て出すことも出来ないでしょうから、どうせなら寝物語に聞かせてください」
「長い話になりますよ。何回かかるか分かりませんよ」
「構いません。代わりに俺の話も聞いてください。俺の水の月の話を」
 何も言わずに空いている方の手で体に付いた縄の跡を愛おしげに指先でなぞると、イルカはほうっとため息を吐き、深く口付けてきた。
 腕の感覚はまだ若干しか戻っていないのか、カカシにもたれかかりながら弱弱しくも回されるイルカの腕の縄の後をなぞった途端、腰の辺りが更にずしりと重さを増すのが分かった。先ほどの様に自分の下半身の熱い高ぶりをイルカに擦りつける。首筋にハアッと熱い吐息がかかり、イルカも同じように腰を擦りつけてくる。
 吐精しくたりと力を失っていた筈の性器は何時の間にか硬さを取り戻し始めていて、押し付けられるズボン越しにその熱を感じた。


 イルカの体に付けた縄の跡の様に体の奥底まで縛り付け、逃げ出すことが無い様に絡め取るつもりであったけど、囚われてしまったのは彼では無く自分の方なのかもしれない。

 逃すまいと言うかのように、いつの間にか首にしっかりと回されイルカの腕の感触にカカシはそんな事をぼんやりと感じていた・・・・・・。


                                 【終】

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